九州大学(九大)ロバート・ファン/アントレプレナーシップ・センター(QREC)は、2021年度で設立10周年を迎えたことを記念したイベント「アントレプレナーシップ教育が拓く未来」を6月12日に開催した。

  • QRECのポスター

    QREC 設立10 周年記念イベント「アントレプレナーシップ教育が拓く未来」のポスター

QRECは、新規事業創出や新製品開発を実現する強い意欲を持ち、その過程に出てくるさまざまなリスク・困難に対して果敢に取り組んでいく姿勢や発想、能力を持つ“起業家精神(アントレプレナーシップ)”を実践的に学ぶことができる教育機関である。

日本の大学や大学院の中で、体系的なアントレプレナーシップ教育カリキュラムを提供できる機関としては数少ないうちのひとつだ。

QRECのセンター長を務める、九大大学院経済学研究院 産業マネジメント部門の高田仁教授は同センターのWebサイトで「学生たちは、今はまだ存在しない職業にいずれ就く可能性も視野に入れながら学ぶことが必要です」とアントレプレナーシップ教育の重要性を述べている。

QRECは、米国で起業家として成功をおさめた、九大の卒業生ロバート・ファン氏からの寄付金をもとに2010年12月に設立され、その後も九大出身の卒業生の事業家などからの寄付金を受けて運営されてきた。

そして、大学・大学院の学生などを対象に、1年当たり約30科目のアントレプレナーシップ教育を提供し、年間の延べ履修者は1,300人を超える規模となっているという。

カリキュラムを通じ、ベンチャー企業・スタートアップを起業する若手人材を育成・輩出し、特に福岡県内で起業する若手人材を育成・輩出してきた実績を持っている。

これらの活動の結果、2020年度には内閣府の「スタートアップエコシステム拠点都市形成事業」の「グローバル拠点都市」として九大・福岡市が選定され、その事業運営をQRECが担当することとなった。

さらに、2021年3月には科学技術振興機構(JST)の「社会還元加速プログラム(SCORE)大学推進型(拠点都市環境整備型)」事業に採択され、その実践も進めている。

九大は大学の研究成果の技術移転や大学発ベンチャー企業の創出などを促進する基金の「GAP ファンド制度」を以前から持っていたが、2021年度からベンチャー企業の設立をさらに強力に助成する制度の「GAP ファンド NEXT プログラム」を始めたところだ。

そのGAP ファンド NEXT プログラムの推進役のひとつをQRECが担っている。

10周年を迎えたQREC。今後も福岡を中心とした近隣大学や地域との連携を深め、戦略的な取り組みを進めていく方針だ。

【筆者注】

日本の大学の“GAP ファンド制度”は、東京大学や京都大学などが以前から実施し、大学発ベンチャー企業の創出などの成果を上げている。国立大学を中心に、“GAP ファンド制度”を持つ大学が増えている。