旭硝子財団(島村琢哉理事長)は16日、地球環境問題の解決に尽くした研究者らに贈る「ブループラネット賞」の今年(第30回)の受賞者に、メタンや代替フロンなど二酸化炭素(CO2)以外の大気汚染物質が地球温暖化に与える影響を明らかにした米カリフォルニア大学のヴィーラバドラン・ラマナサン教授(76)と、国連の持続可能な開発目標(SDGs)につながる考え方を提唱したスリランカ・ムナシンゲ開発研究所のモハン・ムナシンゲ所長(75)の2人を選んだと発表した。表彰式は10月6日に東京都内で開き、それぞれ賞状と副賞5000万円を贈る。
同財団によると、ラマナサン氏は短寿命気候汚染物質(SLCPs)と呼ばれる物質の気候への影響を数十年にわたって研究してきた。その中で冷媒などとして広く使用されてきたフロンの一種であるクロロフルオロカーボン類(CFCs)が地球を温暖化させる能力は、CO2の約5000~1万倍にもなると報告。CO2以外にも温暖化の要因になる物質があることを周知させるきっかけになった。また、石炭を燃やして出る浮遊微小粒子成分のブラックカーボンが環境に与える悪影響も明らかにするなど、SLCPs削減のための国際的な活動を主導した。
ムナシンゲ氏は、開発の問題を経済、環境、社会の3つの観点から捉える「サステノミクス」の考え方を創出。革新的な概念である「公正な包括的グリーン成長(BIGG)」や「ミレニアム消費目標(MCGs)」が生まれた。こうしたアプローチは現在、世界各国が目指すSDGsにつながった。同氏は、この考え方を世界に広めるために環境経済学と環境政策を用いて実践的な活動を展開している。
受賞が決まったラマナサン氏は「この賞は、政治的な分断の橋渡しをし、科学を政治や信仰と連携させる私の気候変動問題解決の取り組みを力強く導いてくれる北極星のようです」、ムナシンゲ氏は「受賞によりいただいた世界的な舞台を活用して、地球をすべての人にとって持続可能なものになるよう努力していきたい」などとそれぞれコメントしている。
ブループラネット賞は、旭硝子財団が地球サミット開催を機に1992年に創設。毎年、地球環境問題の解決に向けて科学技術の面で著しく貢献した個人または組織を選び、環境分野の賞として国際的にその名が知られている。
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