F5ネットワークスジャパンは6月16日、買収戦略およびVolterra買収を通じたエッジ・クラウド戦略を紹介する説明会を行った。F5は今年2月に、エッジコンピューティングの実現に必要な仮想環境の配備や機器間の通信セキュリティなどの機能を備えたEdge as a Serviceプラットフォームを提供するVolterraを買収した。
代表執行役員社長の権田裕一氏は、F5がさまざまな企業を買収している目的について「激動のビジネス環境に対応する、Adaptiveな(受容性のある)アプリケーションの実現に向けて、開発者が機能要件に時間を割くことなく、ビジネスロジックやアプリケーションの開発に注力できるよう、買収によってビジネスを拡大している」と語った。
オープンソースのWebサーバを開発しているNGINXを買収した理由については、「われわれはこれまでオンプレミスのミッションクリティカルなアプリケーションを対象としたソリューションを提供してきた。しかし、DX(デジタルトランスフォーメーション)の広がりとともに、アプリケーションもマイクロサービス化など、変化してきた。NGINXを活用して、こうした世界にF5のサービスを提供できるようにしていきたい」と権田氏は説明した。
また、クレデンシャル詐欺を防ぐ製品を提供するShape Securityを買収した理由については、「2要素認証が破られるなど、新しいタイプのサイバー攻撃に対抗するために、Shape Securityを買収した。これにより、インターネットのアプリケーションを保護する」と語った。
そして、Volterraについては「エッジにもF5の機能を持っていくため、買収した」という。エッジに着目している理由について、権田氏は次のように説明した。
「昨今、データを軸にビジネスを展開する『データ駆動型ビジネス』が進んでいるが、これにより、エッジにまでアプリケーションが分散されるようになり、新たなデータ・トラフィックの形態が生まれる。例えば、エッジ間、メッシュ化された環境の中でデータがやり取りされるようになり、新たなビジネスチャンスが生まれる。また、双方向のトラフィックが増えるようになり、一貫してマネジメントできるツールが必要になるが、Volterraはそれを提供している。こうしたらデータ・トラフィックの基盤を『Edge 2.0』と位置づけ、世界展開していく」
続いて、Volterra事業本部本部長の山崎朋生氏が、エッジ分野におけるVolterraの立ち位置を説明した。同氏は、エッジが注目されている背景について、「コネクテッドカーなど低遅延を必要とするアプリケーションの利用が増えると、ユーザーに近いところでデータを処理することが求められる。また、帯域が太い5Gがラストワンマイルとして使えるようになると、エッジにリッチなアプリケーションが置けるようになってくる」と説明した。
山崎氏は、エッジネットワークを構成する要素のうち、「パブリッククラウド」「ネットワークエッジ」「カスタマーエッジ」「デバイスエッジ」をVolterraがカバーし、今後はカスタマーエッジの重要性が上がってくる見ていると述べた。
Volterraの主要機能は、「分散されたエッジデバイスに対するアプリケーションの配信」と「エッジデバイス間の接続の一元管理」であり、。Volterraの主なサービスは以下の3つとなっている。
- VoltStack:分散型アプリとインフラのためのプラットフォームサービス(エッジデバイスとしてアプリケーションを実行)
- VoltMesh:分散型ネットワークとセキュリティサービス(VoltStack間の接続やセキュリティ等のネットワークサービスを提供)
- VoltConsole : 分散アプリケーションとインフラストラクチャのための単一画面(VoltStackとVoltMeshを統合管理)
エッジ基盤のユースケースとしては、「IoT」「アプリケーションのパフォーマンス改善」「ネットワークのアーキテクチャの刷新」「データ収集・解析」「リアルタイムの演算処理」があるが、海外に比べて、日本ではIoT志向が強いという
山崎氏は、IoT分野におけるVolterraの利用例として、「製造業・流通業向けIoTゲートウェイ」を紹介した。Volterraによるゲートウェイは、従来のサービスよりも高度なアプリケーション管理・制御や、柔軟性が必要なアプリケーション基盤としての利用が可能だという。