半導体市場調査会社である米IC Insightsは6月16日(米国時間)、2021年のIC市場成長率を、2021年1月時点の前年比12%増から3月に同19%増と上方修正していたが、今回、新たに同24%増へとさらなる上方修正を行ったことを明らかにした。
DRAMおよびNAND市場におけるビット単価の継続的な値上がり、ならびにロジックやアナログICといった製品カテゴリの多くで従来予想よりも高い成長見通しが得られたためとしている。メモリを除いたそのほかのIC全体の成長率も同21%と予測しているが、世界半導体統計(WSTS)も2021年の半導体成長率を2020年12月公表の秋季予測から2021年春季予測では同19.7%増へと上方修正しており、今後、多くの市場予測会社が相次いで上方修正に走ることが予想される。
IC Insightsでは、WSTSが規定している33種類のIC製品について、それぞれの成長率を見積もり、それらのIC製品の内、成長率の高い上位10製品も発表している。同社は、それぞれのカテゴリの出荷数量、平均販売単価、2020~2025年の平均成長率などを考慮して売上高予測を行ったとしている。
その中で、もっとも成長率が高くなると見込まれているのが産業用の専用ロジック製品で成長率は同47%増と見込んでいる。コロナ禍からの回復のめどが立ち、いよいよポストコロナに向けて産業界のDX化が加速すると見られるためである。次いで、DRAMが同41%増、車載向け専用ロジックが同39%増となっている。2020年は自動車産業の不振でマイナス成長となった車載用アナログICも同31%増と大幅成長の見込みで、このほかコンシューマ用専用ロジック、スマートフォン用MPUやディスプレイ用ドライバも同30%超の成長を遂げる見込みだという。
また、2019年に同8%減と落ち込み、2020年も同3%増にとどまったアナログICも、2021年は供給不足状態にあり、平均販売価格も4%ほど上昇することが見込まれているため、市場として出荷個数で同20%増、金額ベースでも同25%増と大きく成長する見込みとなっている。前回、アナログICの平均販売価格が増加に転じた年は2004年までさかのぼるという。ちなみに2004年のアナログIC平均販売価格は0.60ドルであったが、2020年には0.32ドルまで下落しており、この16年間の年平均成長率は4%のマイナス成長であったという。2021年の牽引アプリケーションは、車載用アナログICだとしている。
平均価格下落も出荷個数増加で伸びるロジックIC
ロジックIC市場は2021年に同24%増との予測だが、産業用が同47%増、自動車用が同39%増、消費者用が同38%増)、ディスプレイドライバ用が同31%増と30%を超す成長が期待されるアプリケーションも多い。ただし、ロジックIC全体の平均販売価格は同5%減と見込まれており、市場の成長としては、出荷個数が同30%増と大幅に伸びることでプラス成長を果たす見通しだという。
一方のメモリ市場は、DRAMのビットあたり単価が2020年第4四半期の1Gビットあたり39セントから2021年第2四半期には50セントへと上昇していることもあり、同社ではDRAM市場の2021年予測を同41%増へと引き上げている。また、DRAMのビットあたり単価についても、供給逼迫が続いているため、2021年下半期も引き続き上昇すると予想している。
また、NAND市場も同22%増とトップ10外ながら、高い成長率を示す見込みである。NANDのビットあたり単価は2020年第1四半期から2021年第1四半期にかけて26%低下したが、2021年第2四半期には安定し、2021年下期にかけて上昇基調に転ずると予想しており、その結果、メモリ市場全体でも同32%増となるとIC Insightsは予測している。
なお、2021年予測の前年比24%増という成長率は、リーマンショック後の2010年に記録した同33%増、2017年のいわゆるメモリバブルによる同25%増に次ぐ過去16年間で3番目に大きな成長率だという。