エッジAIの活用は製造業だけにとどまらない。
OKIが開発・販売を行うAIエッジコンピュータ「AE2100」はディープラーニングの推論環境を提供するインテルの「OpenVINO ツールキット」とAIアクセラレーターである「インテル Movidius Myriad X VPU」を搭載しており、クラウドを介さずその場で AI処理ができるコンピュータだ。
リアルタイム性などを活かし、製造設備の異常監視、品質検査への活用がみられるが、実は製造現場だけでなく、さまざまな分野への応用が可能だという。実際、6月2日~4日にかけて東京ビッグサイトで開催された「ワイヤレスジャパン2021」では、交通や感染症対策といった分野での活用事例が展示されていた。
感染症対策にむけたマスク着用と体表温度の検知ソリューション
AE2100とサーマルカメラを組み合わせ、体表温度とマスク着用有無の自動検知と認証を行う感染症対策ソリューションが「Smart Entrance Eyes」だ。
サーマルカメラを用い、体表温度の測定を行うと同時に、通常の光学カメラで映像をとらえ、AE2100でマスクの有無を判断する。
同ソリューションの大きな特徴は、カメラの前で立ち止まる必要がない点と複数人を同時に検知できる点で、そのメリットを活かし、工場や空港、駅、ホテル、大規模集客イベントなどの利用を見据えているとしている。
リアルタイム車両センシングで逆走探知や通行量検出
道路に設置したカメラとAE2100で交通量などのデータを計測するソリューションが「AISION 車両センシングシステム」である。
このシステムは、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から道路交通状況の推移を公表する目的で2021年4月に、三重県の主要道路10か所に導入されているという。
交通量の計測だけでなく逆走の探知などにも使用可能で、今後は渋滞・混雑の検出などができるようにアップデートする予定だという。
遠隔監視・遠隔操船に応用可能な俯瞰映像モニタリングシステム
映像モニタリングシステム「フライングビュー」は4台のカメラ映像をFPGAを搭載した本体装置で合成し、周囲の俯瞰映像を生成することができるシステムだ。今のところAE2100との連携は行われていないものの、将来的には対応する予定で、単に周辺映像を映すだけではなく、AIによる画像認識の機能をもたせることで高度知能化を図っていくという。
OKIは6月2日に、自動運航船の実用化に向けて、海上・港湾・航空技術研究所とフライングビューを活用した研究を行っていくと発表しており、自動運航船における「他船や周囲障害物との距離把握方法の検討」や「夕刻、夜間、波浪ありなどの環境条件を想定した影響把握と対策検討」を行うとしている。
なお、AE2100に関してはOKIでは、自社でAIソリューションを持つAIベンダーやエッジでのAIソリューションを検討中のSIerを対象に 1ヵ月間無料で貸し出しを行うキャンペーンを実施している(2021年6月16日時点)。