京都府立医科大学は6月15日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者の唾液中のウイルスを不活化できれば飛沫感染の抑制に効果的であると考察し、食品成分によるウイルス抑制の研究・試験を開始した結果、お茶に含まれるカテキン類(茶カテキン類)がウイルスを不活化する(感染能力を失わせる)ことを発見したと発表した。合わせて、伊藤園中央研究所との共同研究を開始したことも発表された。

同成果は、京都府立医科大 大学院医学研究科免疫学の扇谷えり子講師、同・新屋政春助教、同・松田修教授らの研究チームによるもの。詳細として2本の論文がまとめられ、1つは分子が題材の査読つき国際オープンアクセスジャーナル「Molecules」に、もう1つは病原微生物が題材の査読つき国際オープンアクセスジャーナル「Pathogens」にそれぞれ掲載された。

緑茶の「エピガロカテキンガレート」、紅茶の「テアフラビン3、3'-O-ジガレート」などのガレート型テアフラビンのほか、カテキン誘導体の「テアシネンシンA」など、さまざまな茶カテキン類があり、それらは緑茶や紅茶に高濃度に含まれている。

今回、これら茶カテキン類が、試験管内のレベルではあるが、SARS-CoV-2を不活化することが見出されたという。茶カテキン類がSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合し、細胞のACE2受容体との結合を抑制。感染能力を低下させる効果などが確認されたのである。また、同様に試験管内ではあるが、ヒト唾液中に加えたSARS-CoV-2に対しても、茶カテキン類による迅速かつ効果的な不活化が認められたという。

ただし、感染者がお茶を飲んでもすぐに体内のSARS-CoV-2に対して不活化効果が出るかというと、残念ながらそれは難しいとする。その理由は、茶カテキン類はお茶を飲んでも体内へ吸収される量が少ないからだ。特に、重合した茶カテキン類はほぼ体内へ吸収されることはないという。こうしたことから、お茶を飲むことで消化管から吸収された茶カテキン類が、全身的に作用するという効果は期待しにくいとしている。

ただし、研究チームは現状においては、あくまでも試験管内の実験で確認されたことであるとしており、現在、感染者がお茶を飲むことで、口腔内におけるSARS-CoV-2がどのような影響を受けるのかを検証する臨床研究を実施中としている。

なお、今回の研究では、B.1.1.7型(イギリス型)やP1型(ブラジル型)などの変異ウイルスでの検証は実施していないという。茶カテキン類のエピガロカテキンガレートはブラジル型には効果があるがイギリス型の一部には効果が低いという結果は得ているそうだが、これらについても現在研究を進めている段階としている。