富山大学は6月9日、2014年に富山県が実施した同県における認知症高齢者実態調査の追加分析を実施し、高齢者の婚姻状況と認知症に関する新たな知見を得て、配偶者と一緒にいない状況は、配偶者と一緒にいる状況と比べて認知症を発症するオッズ比(リスク指標)が1.71倍高く、また生活習慣病との関連では脳卒中を発症するオッズ比が1.81倍高くなることが明らかになったと発表した。
同成果は、敦賀市立看護大学の中堀伸枝講師、富山大 地域連携推進機構 地域医療保健支援部門の山田正明助教、同・関根道和教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、日本老年精神医学会の機関誌「Psychogeriatrics」に掲載された。
富山県認知症高齢者実態調査は、同県内の65歳以上の高齢者から0.5%の割合で無作為抽出された1537人のうち、同意の得られた1303人(同意率84.8%)に対して実施された。今回の分析では、認知症患者137名と、健常者1034名を対象に、生活習慣病に婚姻状況を加えて認知症との関連性の評価が行われた。
その結果、年齢が高いほど認知症に対するオッズ比が高くなっていくが、配偶者と一緒にいない状況(死別が88%、ほかに離婚、未婚)も認知症と関連することが判明。配偶者と一緒にいない人の認知症に対するオッズ比は、配偶者といる人(同居と施設入所を含む)に比べ1.71倍高いことが判明したという。
また生活習慣病との関連では、配偶者といる人と比較して、配偶者と一緒にいない人の脳卒中に対するオッズ比は1.81倍であることが確認されたとする。なお、そのほかの生活習慣病(糖尿病や心臓疾患)に対する統計的な有意差は見られなかったという。
なお、配偶者と死別すると、生活習慣が悪化することがこれまでの研究から報告されている。死別は人生における最大のストレスとされ、精神状態が悪化しやすくなるといわれており、死別者は脳卒中などの生活習慣病になることや精神状態の悪化から、認知症になりやすくなることが考えられるという。そのため、今回の研究結果から、高齢期の認知症への対策として、死別などの婚姻状況の変化にも注意を向けていくことが重要であることが示されたとしている。