MuleSoft Japanは6月10日、「2021年版 接続性ベンチマークレポート」を発表した。MuleSoftとデロイトデジタルが共同で、800人のグローバルITリーダーを対象に接続性とDX(デジタルトランスフォーメーション)現状を調べたもの。その目的は、企業がDXから実際にどれだけの価値を得ているのかを明らかにし、DXの目標を達成するためにITリーダーたちがどのような戦略を採用しているのか理解すること 。
同レポートによると、企業のIT部門は、労働時間の3分の1以上をインテグレーション・プロジェクトに費やしており、特に大手企業がカスタムインテグレーションのために支出する人件費は、年間平均350万ドルに上ることが明らかになった。同社は調査結果より、業界を問わずインテグレーションこそが、DXの成功とスピードを決定づける重要な要素であると結論付けた。
同レポートの調査には、世界の800名のCIO(Chief Information Officer)とITの意思決定者が参加しており、50名の日本の回答者が含まれている。MuleSoftのブレント・ヘイワード最高経営責任者は、同レポートについて「あらゆる業界の企業が、顧客や従業員とのやりとりにデジタルチャネルを活用する方向へと急速にシフトしています。大半の企業は、eコマース・プラットフォームの立ち上げや、デジタル化による従業員の生産性向上を優先的に推進しています。しかし、こうした重要な取り組みにおいて、データサイロが依然として障壁となっていることが今回の調査で明らかになりました。IT部門とビジネスユーザーがアプリケーションとデータを簡単に統合できるようになれば、企業は組織内の能力を最大限に引き出し、大規模なイノベーションを推進して競争力を高めることができるでしょう」とコメントした。
同レポートによると、企業が2021年に注力している主な取り組みは、アプリケーションのクラウドへの移行(51%)、リモートワークへの対応(48%)、ビジネスプロセスの自動化(47%)であった。また、今年組織がIT部門に要求したプロジェクトの数は、昨年よりも平均30%増加し315件となった一方で、昨年すべてのITプロジェクトを完了できたと回答した組織はわずか37%にとどまった。
回答者のうち90%が、DXの実現を阻む要因としてインテグレーションの課題を挙げた。組織が使用するアプリケーションは平均843個だが、インテグレーションが実施されているのは29%であった。また、IT部門以外でインテグレーションのニーズが高かったのは、データサイエンス(47%)、ビジネスアナリスト(42%)、財務(42%)であった。
調査の対象となった組織のうち80%が、生産性を向上させイノベーションの促進を図るには、ビジネスユーザーがデータへのアクセスやインテグレーションをすることが必要だと認識していた。36%の組織がITを専門としないユーザーが、APIを使ってアプリケーションとデータソースを簡単に統合できるアプローチをとっていると回答し、さらに44%の組織が、そうした計画を策定中であると回答した。こうした結果から、企業がインテグレーションを通じて、ビジネスユーザーの生産性向上を目指していることが明らかになった。