日立製作所は6月8日、機関投資家やアナリスト、報道機関向けの事業戦略説明会「Hitachi Investor Day 2021」をオンラインで開催した。

同社の執行役会長兼執行役社長兼CEOを務める東原敏昭氏や各セクターの責任者が2021年度の中期経営計画の進捗などについて説明するなか、インダストリーセクターの取り組みについて、執行役副社長 インダストリー事業統括本部長の青木優和氏より説明が行われた。

  • 青木氏

    発表を行った執行役副社長 インダストリー事業統括本部長の青木優和氏

2021年度の見通しは増収・増益

インダストリーセクターは、日立製作所内の「産業・流通ビジネスユニット」「水・環境ビジネスユニット」とプロダクト事業を展開する「日立産機システム」と「日立インダストリアルプロダクツ」の2つの分社会社の4つから構成されており、製造業で使用するプロダクトからOT、ITといった現場から経営まで幅広いソリューションをセクター内に持つ。

2020年5月に公表した売上収益では、COVID-19の影響を鑑み、当初打ち出していた売上収益より1,476憶円下回る7,618憶円、調整後営業利益率は4.3ポイント下回る3.2%の下方修正を行っていた。

しかし、グローバル事業の拡大やデジタル事業へのシフトによって売上を確保し、2020年度の実績値では下方修正した売上収益を963憶円上回る8,581憶円、調整後営業利益率は5.7%の実績となったと説明した。

また、2021年度について、COVID-19の影響が継続するもののDXニーズをとらえることで、売上収益が8,800憶円、調整後営業利益率は8.2%と増収・増益の見通しであると説明した。

  • 業績推移

    インダストリーセクターの業績推移

好調なグローバル事業、今後はロボティクスSIとデジタルの融合を強化

次に、買収を行った企業の業績の説明が行われた。

2019年度末に買収を完了したロボットSI事業を手掛けるJR Automationは、COVID-19の影響をうけたものの、eコマースやメディカル領域の大幅な伸長で売上収益増となった。2020年度の第4四半期の受注高は2019年度の第4四半期の受注高と比較すると、200%の成長をみせた。

  • JR Automation

    JR Automation買収後の業績推移

また、グローバルプロダクト群の強化に向けて買収を行った、空気圧縮機などを手掛けるSullairも新規顧客基盤の拡大や、生産体制の強化を図り、2020年第4四半期の受注高では、前年同期比で118%の伸長となった。

  • Sullair

    Sullair買収後の業績推移

好調な成長をみせるグローバル事業に関して、青木氏は「高い成長が見込まれるロボティクスSIとデジタルの融合を強化し、2022年度以降は経営と現場をデジタルでつなぐエンドツーエンドのデジタルソリューションに発展させていく」とした。

同社は、ロボットSI事業の強化のため、2021年4月に知能ロボットシステム開発のベンチャー企業であるKyoto Roboticsの買収を行っている。また、今夏には、デジタルエンジニアリングサービスを手掛けるGlobalLogicの買収完了も控えており、この買収もロボティクスSIとデジタルの融合を強化するためのものだとした。

  • グローバル事業展開

    インダストリーグループのグローバル事業展開

トータルシームレスソリューションの拡大で各社との差別化を図る

青木氏はインダストリーセクターの今後の戦略として「“際”の課題を解決するトータルシームレスソリューションの拡大」を挙げた。

“際”の課題とは、経営と現場といったタテの関係やサプライヤーと製造、物流、市場といったヨコの関係、異業種といった場に存在し、この“際”をシームレスにつなぎ、全体最適をめざすものが「トータルシームレスソリューション」だという。

インダストリーセクターでは、プロダクトからOT、IT、コンサルティングまでカバーできる強みを活かし、ITとOTのシームレスな接続とデジタル技術を活用した「Lumada」をベースに、トータルシームレスソリューションを展開している。

たとえば、ダイキンとの協創の例では、グローバルに5か所の製造拠点、9か所の販売拠点をつなぎ、需要変動に即応する生産・販売計画の立案・実行支援ソリューションを提供した結果、販売計画に携わる社員の業務負担軽減につながっただけでなく意思決定までの時間を約95%短縮することができたという。 ほかにも、西友とワークマン、MonotaRo、日立物流、アルフレッサ、ニチレイフーズとニチレイロジグループの協創事例が紹介された。

青木氏は、ニューノーマルによって環境が変わることで、ますます“際”の課題解決がさらに重要になるとし、トータルシームレスソリューションの進化と拡大を進めていく方針だ。

インダストリーグループでは、トータルシームレスソリューションの強化、グローバル事業成長の加速、経営基盤の強化により、売上高1兆円超、調整後営業利益10%超を目指していくとしている。