パナソニックとSQUEEZEは6月9日、非接触・非対面・省人化運営と高品質な接客の両立によるホテル経営のDX(デジタルトランスフォーメーション)を目指した共同実証実験を開始すると発表した。この実験による両者の狙いは、ホテルのホスピタリティを維持・向上させ、リピート率の向上につながるのかを検証すること。
実証実験はSQUEEZEが運営する次世代型スマートホテル「Minn 蒲田」で行われ、 パナソニックが提供する、接客業務の最適化を促進する遠隔コミュニケーションシステム「AttendStation(アテンドステーション)」と、 電力モニタリングと遠隔コントロールシステム「AiSEG2(アイセグツー)」を使用する。
「AttendStation」は、ホテルのフロントから離れた場所にいるコンシェルジュが、フロントに設置されたディスプレイ上のアバターを介して接客を行えるシステム。アバターの表情は、操作をするコンシェルジュの顔の動きや表情に連動しており、さらに、状況に応じてお辞儀や手を振るなどの仕草も選択できる。コンシェルジュがあらかじめ用意した補足説明の資料やWebサイト、ホテル周辺の地図などを、利用者との対話内容に合わせてディスプレイに表示する機能も備えている。今回の実証実験では、 ゲストの満足度を損ねることなく、フロント人員の人件費の約75%削減を目指す。
「AiSEG2」はエネルギーコントロールに加えて、さまざまな家電との連携が可能な機器であり、エネルギー使用量を可視化し、家電・電気設備を最適化するHEMS(Home Energy Management System)の中核である。スマートフォンアプリによって、家電や電気設備をコントロールすることが可能。従来は棟全体での管理が一般的であったホテルの水光熱費管理に対し、同実証実験では、部屋ごとの電気代を緻密に把握し、部屋ごとの原価管理を推進する。さらに、「AiSEG2」とSQUEEZEの無人チェックインシステムを連携させることで、利用者のチェックイン/チェックアウトに連動した、空調と照明の適切なスイッチの切り替えにつなげるとしている。
ホテルの財務構造は、固定費が高いにもかかわらず、売り上げが環境変化により影響を大きく受ける形となっている。そのため、コロナ禍で苦しい状況にあるホテルが事業を持続する上では、固定費を極力効率化した運営が求められている。 両社によると、将来的にはチェックアウトのタイミングを把握し、 電力使用データを活用して滞在状態や電気機器の使用有無を確認し、 水光熱費の低減、適切な清掃のリソース配分を行うなど、 さらなるコスト削減にも取り組んでいくという。
パナソニックは同実証実験により、 機器を通じてホテル経営のDX化推進や、 ホテルのサービス改善、顧客満足度の向上に取り組むとともに、環境負荷を極力減らしてSDGs(Sustainable Development Goals)に配慮したホテル運営への貢献を目指していく考え。
SQUEEZEは今回の実証実験を踏まえ、遠隔コミュニケーションシステムと同社のクラウドコンシェルジュをパッケージ化したサービスや、電力モニタリング・遠隔コントロールシステムを活用した電気代削減ソリューションを同社運営以外の宿泊施設にも提供していくとしている。