2021年6月4日、ユーグレナは国土交通省航空局の「サイテーションCJ4」という航空機(飛行検査機)で、ユーグレナ社製のバイオジェット燃料を世界で初めて使用したフライト・飛行検査業務を実施したとプレスリリースで報じた。

この政府機関の航空機「サイテーションCJ4」で国産のバイオジェット燃料が使用されるのは日本で初めてとなるという。

ユーグレナといえばヘルスケア商品、ビューティーケア商品、遺伝子/検査サービスで知っている、そんな方が多いではないだろうか。実は、ユーグレナは、これ以外にバイオ燃料などのエネルギー・環境事業にも力を入れている。今日は、ユーグレナを紹介したい。

ユーグレナのバイオ燃料とは?

社名であるユーグレナの意味は、和名でミドリムシのことで、その名の通りミドリムシを活用した事業を行なっている。

ここでは、企業名を「ユーグレナ」、微細藻ユーグレナは「ミドリムシ」と記載することにする。

ユーグレナは、ヘルスケア商品などBtoCビジネスのイメージが強いと思うが、BtoB(BtoG(Government)含む)事業でも強みを発揮している。その一つが、ミドリムシを原料としたバイオ燃料だ。

2010年から新日本石油、日立プラントテクノロジーと共にバイオ燃料のフィージビリティスタディ(実現可能性検討)を開始している

ミドリムシからバイオ燃料を製造するためには、微細藻類の培養・乾燥、微細藻類からの油分の抽出、抽出した油分の燃料化(改質)といった技術が必要で、この技術に関しての検討を3社で行ってきた。

これらの技術に関しては、米国カリフォルニア大学サンディエゴ校でバイオジェット燃料用のミドリムシの培養研究を開始したり、油を多く産生するミドリムシの変異体を選抜する品種改良法の開発に成功したりと、ここ数年でさまざまな成果を上げてきた。

そしてついに2017年、横浜市の京浜臨海部に日本初となるバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントの建設が開始された。

この実証プラントは、バイオジェット燃料の製造技術の国際規格であるASTM D7566規格を取得することにも成功している。これにより、民間航空機に搭載可能な燃料であると国際的に認められたことになったのだ。

そして2020年には、NEDOの「バイオジェット燃料生産技術開発事業/実証を通じたサプライチェーンモデルの構築、微細藻類基盤技術開発」事業に採択され、実証プラントの運転費用、商業化に向けた事業検討費用、燃料用微細藻類の培養に関する実証設備への投資や運転費用等に対して、助成金を受け、事業を実施していくという。

  • 国内初となるバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラント

    国内初となるバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラント(出典:ユーグレナ)

「日本をバイオ燃料先進国にする」ユーグレナ、バイオジェット燃料の初フライト成功!

冒頭にお伝えしたとおり、2021年6月4日、ユーグレナは「サイテーションCJ4」で、ユーグレナ社製のバイオジェット燃料を初めて使用したフライトに成功した。

ユーグレナのバイオ燃料における実績は、飛行機だけではない。消防車、清掃用車両、バス、船舶、ドローンにバイオ燃料を使用し成功している。

また、ガソリンスタンドで ユーグレナのバイオ燃料を一般自動車向けに販売したり、多くの企業や自治体との連携を進めるなど、従来にはないユニークで、興味深く、そして社会貢献度の高い事業を展開している。

  • ユーグレナのバイオ燃料を使用する飛行検査機「サイテーションCJ4」

    ユーグレナのバイオ燃料を使用する飛行検査機「サイテーションCJ4」(出典:ユーグレナ)

では、なぜ、バイオ燃料なのだろうか。

まず、石油の代替燃料であるということが挙げられる。日本は、石油資源国ではないため、石油を海外からの輸入に頼っている。輸入に依存することによりさまざまな世界情勢によって価格や入手性などが不安定な部分があるのも事実だ。もし、自国でのエネルギー資源が得られたらこれほどのメリットはない。

さらに、バイオ燃料は、既存の石油インフラ、給油インフラが使用できるというメリットがあるのだ。いま、カーボンニュートラルなどの一貫で、水素エネルギー、アンモニアエネルギーなどの話題が出ている。

実は、水素やアンモニア等は既存の燃料の石油・給油インフラに適合しないことが多く、イチからインフラを整備する必要が出てくるのだ。水素エネルギー、アンモニアエネルギーなどを否定しているわけではないことをご了承いただきたい。

ほかには、温室効果ガスや大気汚染の観点が挙げられるだろう。ユーグレナのバイオ燃料は大気汚染の原因となる硫黄分を含まない。そのため、例えば船舶用の燃料油に定められている硫黄化合物(SOx)の濃度を引き下げることを義務付けたSOx規制への対応に適している。

また、燃焼段階では温室効果ガスを発生させないカーボンニュートラルであることから、気候変動や大気汚染対策の観点からも有望視されているのだ。

  • ユーグレナのバイオジェット燃料

    ユーグレナのバイオジェット燃料(出典:ユーグレナ)

いかがだっただろうか。ユーグレナは、2018年10月のバイオ燃料製造実証プラントの竣工を機に、“日本をバイオ燃料先進国にする”ことを目指す「GREEN OIL JAPAN(グリーンオイルジャパン)」を宣言している。

そして2025年までに現在のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントの2000倍の生産能力をもった商用のプラントも計画しているという。

筆者は、ユーグレナがミドリムシを使ってバイオ燃料を製造するという発想自体に驚いているが、ユーグレナの凄さはもちろんのこと、ユニークさ、技術力の高さ、社会貢献度の高さなどなどお分かりいただけたのではないかと思う。

バイオ燃料生成においては、コスト、エネルギー収支において課題もあるが、果敢にチャレンジするユーグレナの今後にも期待したい。