IDC Japanは6月4日、国内産業の5Gに対する市場調査と5G関連IT市場予測を発表した。同調査によると2020年1年間で企業からの5Gに対する意識が大きく変化し、より多くのIoT機器サプライヤーが5Gに注目するようになったとのこと。
産業向け5G市場はこの1年で屋外使用可のSub-6帯ローカル5Gの制度化、実証実験の増加など大きく変化した。COVID-19は産業向け5Gに対し追い風として働き、特にAR/VRの分野での注目度が増加したと見ている。
調査は2019年11月と2020年12月の2度、IoT機器サプライヤーおよびIoT機器バイヤーを対象に行われ、5Gの採用や利用について質問した。2度の調査結果の比較により、IoT機器サプライヤーが「今後最も重要になるネットワーク規格」として5Gを挙げた比率は2019年11月の26.0%から2020年12月には36.5%まで増加したことが明らかとなった。この結果は、より多くのIoT機器サプライヤーが5Gに注目するようになったことを示すという。
一方、IoT機器バイヤーでは「今後最も重要になるネットワーク規格」としてパブリック5Gを挙げた比率が15.0%から9.3%へ減少。ローカル5Gを挙げた比率は8.7%から12.3%へ増加し、無線LANを挙げた比率は19.0%から28.7%へ増加した。この結果に対しIDCは、2020年以降パブリック5Gとローカル5G、ローカル5Gと無線LANの優劣や使い分けに関する議論が増えたことで各企業の理解が深まったためと考察した。
ユーザー企業や通信事業者、ベンダーなどに対する調査結果により、IDCは国内の産業向け5G関連IT市場規模について2106憶円、2027年までの年間平均成長率を80.3%と予測している。今後の展望として、産業分野での5G商用導入は2022年頃に始まり2024年頃に本格化するとし、現在は実証実験にとどまっている産業向け5Gに対する取り組みが2022年以降に5Gスタンドアロン構成のサービスやデバイス増加に伴い、商用導入に踏み切る企業が増加すると見込んでいる。
ドローンやAR/VRなど5Gと親和性が高い他技術分野でも2022年前後を目途に製品開発や規制緩和検討が進められており、5Gと新たなテクノロジーの相乗効果により国内でもDXがさらに加速すると予測しているとのこと。
IDC Japan コミュニケーションズ リサーチマネージャーの小野 陽子氏は、5Gを推進する通信事業者への提言として「2020年以降様々な製品やサービスが出てきて、アプリケーション側にも多くの変化が訪れます。5Gエコシステムの中で市場情報を共有し、どのタイミングでどのような製品を提供するのかタイミングを合わせる必要があります。また、特にローカル5Gベンダーについては、5Gとの親和性が高く5G以外でこれが得意だ、と言える産業分野のソリューションを拡充してほしい」とコメントした。