TSMCは、6月1~2日にかけて「TSMC 2021 Online Technology Symposium」をオンライン形式で開催し、同社の最高経営責任(CEO)である魏哲家(C.C.Wei)氏が、3nmプロセスによる量産を、予定通り2022年下半期に台南市にある台南サイエンスパークにて開始すること、ならびに2nmプロセスについても、年内に台湾の新竹地区に開発ラインを完成させる計画であることを明らかにした。すでに同地区に新工場向け用地取得の手続きをしており、近く2nm量産工場の建設に着手するという。台湾の業界関係者の間では、いずれのプロセスも、Apple iPhoneに最初に適用されると見られているが、TSMCはどういう顧客が利用するかといった情報は公表していない。
また、同シンポジウムでは、以下のようなさまざまな技術に関する最新情報が紹介された。
5~4nmプロセス
TSMCは、2020年に5nm(同社の表記としてはN5)技術を量産に投入した。今後、5nmプロセスファミリの強化策として、4nm(N4)プロセスの導入を進める予定としている。N4では、性能、電力効率、トランジスタ密度が向上する一方、マスク枚数が減らすことができるようになるとしている。同プロセスの開発も順調に進んでおり、2021年第3四半期にリスク生産を開始する予定だという。
また、5nmファミリの最新プロセスとなるN5Aの導入も明らかにした。N5Aプロセスは、ADASや車両コックピットのデジタル化など、デジタル化する自動車アプリケーションにおけるコンピューティングパワーの高まりに対する需要を満たすことを目的としたプロセスで、スーパーコンピュータで使用されている技術を車載向けに適用することで、N5の性能、電力効率、ロジック密度を維持しながら、AEC-Q100グレード2の厳しい品質と信頼性要件、その他の自動車の安全および品質基準を満たすものになるとしており、2022年第3四半期にリリースされる予定だとしている。
3nmプロセス
TSMCの3nm(N3)技術は、2022年後半の量産開始が予定されているが、その時点で世界で最も先進的なプロセス技術となると同社では説明している。実績のあるFinFETトランジスタアーキテクチャを採用することで、N5比で最大15%の速度ゲインの向上、もしくは最大30%少ない消費電力、最大70%のロジック密度向上などが提供されるとしている。ちなみに、競合であるSamsungは、現在までに3nmよりGate-All-Around(GAA)構造を採用するとしている。
5G時代の高度な無線周波数技術 - RF用6nmプロセス
5Gスマートフォンは、4Gと比べ、より多くの機能とコンポーネントを統合しており、チップサイズが大型化している。こうした課題の解決に向け、同社は6nm(N6)プロセス技術をベースとしたN6RF(RF用6nm)プロセスを、5G無線周波数(RF)およびWi-Fi 6/6e向けに提供するとしている。N6RFランジスタは、16nmで提供されていた前世代のRFプロセスに比べて16%以上の高いパフォーマンスを実現したとするほか、6GHz以下およびミリ波スペクトル帯域の両方に対する5G RFトランシーバの電力ならびに面積の削減を可能にするとしている。
「TSMC 3D Fabric」ファミリも拡充
TSMCは、3Dシリコン積層と高度なパッケージング技術の包括的な「TSMC 3D Fabric」ファミリを拡大させ続けてきた。
現時点では、主に高性能コンピューティングアプリケーション向けとしてInFO_oSとCoWoS(Chip on Wafer on Substrate)パッケージングを用いたチップレットと高帯域幅メモリ統合技術を提供しているが、2022年にはTSMC-SoICのCoW(Chip on Wafer)バージョンが生産を開始する予定としており、2021年中にN7-on-N7(7nmプロセスで作製したデバイス搭載のウェハ上に7nmチップを3次元実装する技術)が認定される予定となっているとする。
また、モバイルアプリケーション向けに、InF_Bが提供される予定で、これにより性能と電力効率を高めたスリムでコンパクトなパッケージに強力なモバイルプロセッサを統合できるようになるほか、積層DRAMも搭載できるようになるとしている。