SAS Institute Japanは6月1日、同社の主力製品であるアナリティクスプラットフォーム「SAS Viya」に関する説明会を開催した。同社は昨年に「SAS Viya」と「Microsoft Azure」の連携を発表したが、既報の通り、今年5月に開催された年次カンファレンス「SAS Global Forum」では、SAS製品の新たなクラウド連携として、Amazon Web ServicesおよびGoogle Cloudとの連携が発表された。
ソリューション統括本部 クラウドアナリティクス統括部 エンタープライズ・アナリティクス・プラットフォーム・グループ部長兼クラウドソリューショングループ部長の小林泉氏は、「ビジネス課題解決へのフォーカス」「運用管理の効率化と柔軟性」「意思決定の信頼性と説明責任」「すべての人々にアナリティクスを」という4つの柱をもとに、「SAS Viya」の最新動向および製品戦略について説明した。
「ビジネス課題解決へのフォーカス」を実現するにあたって、「SAS Viya」はコンポジットAIを搭載、Model Opsをサポートしている。コンポジットAIは用途別のAIを組み合わせることで、課題に最適なモデルを構築することを実現する。小林氏は「コンポジットAIは精度の高いモデルを構築できるので、最近注目を集めているが、SASは以前から提供している」と語った。
また、小林氏はビジネス価値を創出する際、モデルのビジネスプロセスやアプリケーションへの実装の困難さが障害になっており、開発されたモデルの半分以下しか業務に実装されていないと指摘した。加えて、開発されたモデルの9割はデプロイに3カ月以上、4割は7カ月以上要しているという。こうしたモデルの実装における課題を解決するため、「SAS Viya」はモデルプロセスの標準化と自動化によって、ModelOpsを実現している。「業務へのモデルの組み込みは組織横断で行う必要がある。そのため、規模が大きな企業では難しく、スタートアップではスピード感をもって行える」と、同氏は説明した。
アナリティクスの「運用管理の効率化と柔軟性」については、クラウド・ネイティブの拡張によって実現している。まず、2020年6月のパートナーシップ締結により、Microsoft AzureがSAS Cloudの非排他的な優先クラウドプロバイダーになった。SASとMicrosoftは、SAS製品とMicrosoftのクラウド製品全体にわたる統合を推進する。例えば、ビジネスユーザーの近いところとなるSASのアナリティクス製品とMicrosoft Power PlatformおよびMicrosoft365を統合することで、AIの民主化を支援する。
クラウド・ネイティブに向けた活動として、今年はAmazon Web ServicesとGoogle Cloudの対応を発表し、対応するクラウドプロバイダーを拡大した。さらに、2021年第3四半期には、Red Hat OpenShiftの対応も計画されており、これにより、SASプラットフォームでもKubernetesのメリットを活用できるようになる。
そして、企業のクラウド戦略に応じるため、複数の提供形態とプライシング構造を提供している。
「意思決定の信頼性と説明責任」に関しては、AI活用に潜在しているバイアスを回避するため、「責任あるAI」を提供している。昨今、アルゴリズムによるバイアス(偏り)によって、人種、性差別などにつながる事態も起きるとして、「AI活用におけるバイアス」が問題視されている。こうした問題を回避するため、「SAS Viya」はデータにおけるバイアスの検出、モデルの透明性の明確化、モデルのガバナンス・トレーサビリティ・コンプライアンスを実現することで、アナリティクス・ライフサイクル全体に対するガバナンスを担保する。
「すべての人々にアナリティクスを」、つまりAIの民主化の実現に向けては、AIおよびアナリティクス技術とデータサイエンティストの知を組織全体で活用するため、スキルと役割に応じた機能およびユーザーインタフェースとコラボレーションプラットフォームを提供する。
具体的には、「セルフサービス、データ準備、パイプライン作成」「AIストーリーテラー」「AutoML、Intelligent Decisioning、Workflow」といった施策が用意されている。