日本における量子技術の開発・実用化に向けた研究開発を促進することを目指した「量子技術による新産業創出協議会」が2021年5月31日に発足した。
幹事企業はNTT、NEC、日立製作所、富士通、東芝の5社で、新協議会設立のための設立発起人参画企業としては、これら幹事会社のほか、JSR、第一生命ホールディングス、東京海上ホールディングス、トヨタ自動車、三菱ケミカルホールディングス、みずほフィナンシャルグループが名を連ねている。
同協議会の設立趣旨としては以下のような文言が掲げられている。
今後20〜30年は人類にとって大きな転換点となる。カーボンニュートラルをはじめとする地球温暖化問題への人類の挑戦が本格化するとともに、量子技術に基づくコンピュータ、通信、シミュレーションなどを利用した新産業が次々と生まれ始める。
量子技術は、古典的手法を凌駕するものとして1980年代より注目され始め、21世紀になって既存技術が限界に近づく中で、関連技術が進歩してきたことにより、その開発が一気に加速してきている。例えば、2050年が開発時期と言われた、誤り耐性量子コンピュータについても、関連技術の応用は既に始まっており、まさに今が量子の時代の分岐点となっている。
来る量子時代に向け、我が国は、技術等における優位性を生かし、コンピュータ、通信、シミュレーションなどを利用し、サービスなどを含めた新産業を創出することで、グローバルで確固たる「量子技術イノベーション立国」としての地位を確立し、新しい時代に貢献し、リーダーシップを発揮することが求められる。さらに、科学技術の発展への貢献を通じて、我が国の産業を振興し、国際競争力を強化し、ひいては、国民の安全・安心を確立しなければならない。
そこで、産学官の関係者が一堂に会して、量子技術に関わる基本原理、基本法則を改めて整理し、その応用可能性、必要となる産業構造、制度・ルール等についての調査・提言を行い、合わせて、新技術の応用と関連技術基盤の確立に取り組み、我が国の社会構造改革を図るための協議会を設立する。
また、その事業目的としては、「量子技術の基本原理、基本法則に立ち戻り、これらを正しく理解し、その応用可能性を見出し、最終的に産業応用するための、企画・検討を行う」としており、「量子技術の動向に関する調査・研究」、「量子技術の産業活用に関する調査・研究・提案」、「量子関連技術に関する調査・検討」、「量子関連人材に関する調査・企画・提案」、「制度・ルールについての調査・検討」などを進めていくことを目的とするとしている。
具体的には、「関連量子アルゴリズムごとに、これらを正しく理解し、その産業応用可能性について調査・検討を行うための部会を設置する」としており、2021年5月31日段階で有望と思われる量子アルゴリズムとして以下の4種を挙げており、それぞれの部会を設置する予定だとしている。
- 量子波動・量子確率論応用
- 量子シミュレーション(連立方程式、変分)
- 最適化・組合せ問題(量子アニーリング)
- 量子暗号・量子通信
また、関連基盤技術(材料、デバイスなど)、重要応用領域(量子マテリアル、量子生命・医薬、量子バイオ、量子センサ、量子AIなど)、人材、制度・ルールなどに関する検討課題の洗い出しも進め、必要に応じて、部会を設置するともしている。
なお、設立総会は7月ないし8月を予定し、その後、業界団体を通して広く会員を募集していくとし、量子技術の産業化に向けて、より多くの企業に向けて参加を促していきたいとしている。