SEMIは5月25日(米国時間)、「200mm Fab Outlookレポート」の最新版に基づき、200mmウェハ(前工程)ファブの生産能力が、2020年から2024年まで4年間で17%増にあたる月産95万枚分が増加し、2024年に過去最高の月産能力となる660万枚に達する見込みで増加していると発表した。

200mmウェハ対応装置への投資額は、2012年から2019年の間は毎年20億ドル~30億ドルの間で推移していたが、2020年には30億ドルを突破、2021年には40億ドルに近づくと予測している。このような設備投資の増加は、半導体業界がチップ不足に対処するために、300mmウェハファブだけではなく200mmウェハファブの生産能力向上を図ろうとしているためだという。

  • 200mmファブの推移

    世界の200mmファブの生産能力およびファブ数の推移予測 (出所:SEMI 2021年5月)

SEMIのプレジデント兼CEOのアジット・マノチャ(Ajit Manocha)氏は、「半導体メーカー各社は同時期に、アナログ、パワー、ディスプレイドライバ、MOSFET、MCU、センサといったチップに依存する5G、車載、IoT機器からの需要増に対応するため、22の新たな200mmファブの増設を進めている」と述べている。

200mm Fab Outlookレポートによると、200mmファブの生産能力のうち、ファウンドリが50%以上を占め、アナログの17%、ディスクリート/パワーの10%が続いているという。また、地域的には、中国が18%(2021年)に占め、その後に日本と台湾がそれぞれ16%(同)で続くとしている。

2022年も200mmファブへの設備投資額は30億ドル以上と見込まれており、その半分以上をファウンドリが投じるとするほか、ディスクリートが21%、アナログが15%、MEMSおよびセンサがそれぞれ7%を占めるとSEMIでは予測しており、2023年以降、200mmファブの数は飽和する見込みだという。

200mmから300mmへの移行も進む

SEMIでは200mmファブの数が増えるとしているが、そこに必要な200mmウェハ対応半導体製造装置のほとんどが新たに製造されておらず、中古市場から入手しないといけないのが現状である。装置の状態次第では、新品以上の値段がつけられている場合もり、新たに200mmファブを建設し、ラインを構築するのは投資に見合わなくなってきている。

そのため、300mmウェハを用いて200mmウェハで生産していたレガシープロセスの車載ならびにIoTデバイスを製造する動きも活発化してきている。

例えば中SMICは中国深センに28nmプロセス対応の300mm工場を建設中であるほか、TSMCも中国南京のFab16に28nm車載プロセス対応の300mmファブを増設する計画を掲げている。台湾でもUMCが台南市の300mmファブであるFab 12A-P6内の空きスペースに1000億NTドル(約3900億円)を投じ、28nmプロセスを用いた新ラインを設置する工事に入る。この新規ラインは2023年4~6月期に、月産2万7500枚(300mmウェハ)で生産を始める予定で、有機ELテレビ用ドライバICなどの半導体を製造する計画。同じく台湾のDRAMメーカー兼ファウンドリであるPowerchip Semiconductor Manufacturing(PSMC)も、台湾新竹科学工業園区にて2780億NTドル(約1兆円)を投じて300mmウェハ工場の建設に着手したと発表している。PSMCの新工場は、2022年9月に製造装置の搬入を開始、2023年から生産を開始する計画だが、あえて25nm~55nmというレガシープロセスを採用することで200mmファブよりも生産性を高めて利益を上げるという。日本のパワー半導体メーカーの中にも300mm化を計画するメーカー(たとえば東芝傘下の加賀東芝エレクトロニクスは2023年に稼働予定)も出始めており、SEMIの予測よりも早く200mmから300mmへの移行が進む可能性がある。