IDC Japanは5月27日、2020年下半期までの実績に基づくソフトウェアとアプライアンス製品を含めた国内の情報セキュリティ製品市場とセキュリティサービス市場の2021年から2025年までの予測を発表した。

これによると、ソフトウェア製品とアプライアンス製品を合わせたセキュリティ製品の市場は、2020年から2025年の年間平均成長率(CAGR)が5.7%で、売上額ベースの市場規模は2020年の3817億円から2025年には5033億円に拡大するという。

  • 国内情報セキュリティ市場の製品分野別売上額予測 資料:IDC Japan

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2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により国内経済が低迷したものの、メール攻撃におけるマルウェアである「Emotet」や身代金要求型マルウェアであるランサムウェアなど複数のマルウェアを組み合わせた高度なサイバー攻撃の被害が継続的に発生していること、また在宅勤務によるリモートワークの拡大で新たなセキュリティリスクへの危機感が高まったことなどから、情報セキュリティ製品市場やセキュリティサービス市場への需要は拡大したとしている。

セキュリティソフトウェア市場では、エンドポイントセキュリティやネットワークセキュリティ、メッセージングセキュリティ、Webコンテンツインスペクションといった外部脅威対策製品の需要が高まり、2020年の前年比成長率は11.5%と堅調だった。

SaaS型セキュリティソフトウェア市場は、リモートワークの普及によるクラウドサービス利用が拡大したことで需要が拡大し、2020年の前年比成長率は35.4%と好調だった。特に、クラウドサービスへのセキュアなアクセスコントロールを実現するアイデンティティ/デジタルトラストへのニーズが急速に高まったという。

セキュリティアプライアンス市場は、VPN接続が増加したことからFirewall/VPNとUTM(Unified Threat Management)への需要が拡大し、2020年の前年比成長率は11.8%と堅調だった。

セキュリティサービス市場は、在宅勤務で利用するクライアントPCなどのエンドポイントデバイスに対するセキュリティ監視を行うマネージドセキュリティサービスやMDR(Managed Detection and Response)サービスへのニーズが高まり、2020年の前年比成長率は3.3%と堅調だった。

2021年以降は、高度化するサイバー攻撃へのセキュリティ対策に加えて、2022年4月までに施行予定の改正個人情報保護法やEU一般データ保護規則(GDPR)などの海外のプライバシー法による情報ガバナンスやコンプライアンス対応への強化、さらにデジタルトランスフォーメーション(DX)の促進よって加速するクラウドシフトに対するクラウド環境へのセキュリティ強化が求められるという。

こうした背景から、国内セキュリティソフトウェア市場は、2020年から2025年におけるCAGRは7.0%で、市場規模(売上高ベース)は2020年の3218億円から2025年には4505億円に拡大すると同社は予測する。

国内SaaS型セキュリティソフトウェア市場は、クラウド環境へのセキュリティニーズが高まり、2020年から2025年におけるCAGRは17.5%で、市場規模(同)は2020年の599億円から2025年には1342億円に拡大するという。

一方で、国内セキュリティアプライアンス市場は、クラウドシフトの加速によってセキュリティ投資がクラウド環境へのセキュリティ対策に向けられることから、オンプレミスシステムであるセキュリティアプライアンス市場は減速し、2020年から2025年におけるCAGRはマイナス2.5%で、市場規模(同)は2020年の600億円から2025年には527億円に縮小すると同社は予測する。

国内セキュリティサービス市場は、クラウド環境に対するセキュリティ構築サービスや、高度なサイバー攻撃に対するマネージドセキュリティサービスやMDRサービスといったセキュリティシステム運用管理サービスへの需要が高まり、2020年から2025年のCAGRは3.5%、市場規模(同)は2020年の8616億円から2025年には1兆230億円に拡大するという。