TSMC、国立台湾大学、米マサチューセッツ工科大学(MIT)の3者は共同で、1nmあるいはそれ以降の半導体製造プロセスで2次元(2D)材料を用いたトランジスタのコンタクト電極に使用できる最適な半金属材料を見出したと、5月12日に発行されたNature誌に発表した。これにより、ムーアの法則を1nmを越えてさらに微細化へ延命させる道が開けたとしている。
論文題名は、「Ultralow contact resistance between semimetal and monolayer semiconductors(半金属と単分子膜半導体間の超低コンタクト抵抗)」であり、著者として3つ組織の23名の研究者が挙がっている。
論文では、今回の研究の動機として、「究極の超微細トランジスタを開発するには、ソース・ドレイン間のチャネル材料と超低抵抗コンタクト材料の両方を見出す必要がある。原子レベルにまで薄くした2D半導体材料は、究極の高性能電子デバイスを実現する大きな可能性を秘めている。ただし、金属誘起ギャップ状態(MIGS)により、金属と半導体の界面でエネルギー障壁が存在し、このために、接触抵抗が高くなり、電流供給能力が不十分になる。そのため、2D材料をトランジスタに使用するには制約があった」として超低抵抗コンタクト材料を見出すことを目指したとしている。
具体的には、「半金属ビスマスと半導体単層遷移金属ジカルコゲナイド(Transition Metal Dichalcogenide:TMD)の間のオーミック接触を測定したところ、ショットキー障壁の高さがゼロ、接触抵抗が123Ωμm、単層MoS2でオン状態電流密度が1μmあたり1,135μAであったという。
これらの2つの値は、著者らによると、それぞれこれまでに記録された最低値および最高値だという。また、MoS2、WS2、WSe2などのさまざまな単分子層半導体(いわゆる2D材料)上に優れたオーミック接触を形成できることも分かったとしている。また、ここで報告した接触抵抗は、2次元半導体材料の改善につながり、Mooreの法則が1nmを越えて延命する可能性を示唆していると述べている。
TSMCと国立台湾大学とMITの3社は、2019年から1年半にわたり、研究開発で協力してきたという。MITが材料技術を開発し、TSMCがそれを用いたプロセスを最適化し、国立台湾大学がこれを1nmデバイスに作りこむことに尽力したという。なお、2D材料は、1nmおよびそれを超えた究極の超微細トランジスタのチャネル材料として、2020年にベルギーの半導体研究機関imecがロジックデバイスのロードマップに載せたばかりである。
TSMCは、世界に先駆けて2022年に3nmプロセスの量産を開始し、2024年に2nmプロセスの量産を開始するという計画を掲げており、1nmプロセスについては2020年代後半の実用化に向けて研究を開始した段階にあるとしている。