観測史上最古となる124億年前の渦巻き構造を持つ銀河を発見した、と国立天文台などの研究グループが発表した。南米チリのアルマ望遠鏡による成果で、138億年前の宇宙誕生からわずか14億年の初期に見つかったことで、宇宙にさまざまな形の銀河が存在する仕組みの解明につながるという。
現在の宇宙では、太陽系がある天の川銀河(銀河系)をはじめ、渦巻き銀河は銀河の70%ほどを占める。ただ時間をさかのぼると少なく、2019年に報告されこれまで最古とされてきた114億年前のものを含め、100億年以上前のものは数個しか見つかっていない。宇宙の歴史で渦巻き銀河がいつごろ作られ始めたのかが関心の的となってきた。
そこで研究グループはアルマ望遠鏡で2018年に観測した銀河のうち、124億光年の距離にあるおとめ座の「BRI1335-0417」に注目。星の材料となるガスに含まれる炭素イオンのデータを解析した。その結果、明るくまとまった中心部と、その両端から出た2本の腕が渦を巻くような構造を発見。バルジと呼ばれる中心部の膨らみやガスの動きも、渦巻き銀河と特徴が似ていた。
直径は少なくとも約3万光年で、約10万光年の天の川の3分の1規模。質量は天の川と同等で、太陽の600億倍とみられる。研究グループの総合研究大学院大学博士課程の津久井崇史氏は「今後、どんどん物質が集まって進化する可能性を考えると、このような昔に存在した銀河としては巨大だ」と指摘する。
宇宙初期に渦巻き構造の銀河ができた仕組みは謎という。研究グループの国立天文台、総合研究大学院大学の井口聖教授(電波天文学)は「これまで渦巻きは時間をかけ“後々にできる”という感覚を持っていた。今回は114億年前からわずか10億年さかのぼっただけのようだが、星が活発にできて銀河の構造ができ上がっていくピークの前、銀河の誕生期に近い時代に発見したことが非常に面白い。銀河形成のシナリオを考える上で重要な問題提起となった。さらに観測を重ねる必要がある」と述べている。
太陽系は天の川銀河の渦巻きの腕の中に位置しており、渦巻きの起源を明らかにすることが、太陽系誕生の謎を探る手がかりにもなるという。
アルマ望遠鏡はチリの標高5000メートルの高地に建設され、2011年に観測を開始した電波望遠鏡。日米欧などが運用する。パラボラアンテナ66台を連携させ1つの巨大望遠鏡とする「干渉計」の技術を利用している。ガスやちりから出るミリ波とサブミリ波を高感度、高分解能で捉え、星や銀河の誕生、進化の謎に迫る。
研究グループは国立天文台と総合研究大学院大学で構成。成果は米科学誌「サイエンス」電子版に20日付で掲載された。
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