ガートナー ジャパンは5月24日、2021年の日本のIT支出総額が、2020年から2.6%増の27兆9,730億円に達するという見通しを発表した。業種別では、成長率が最も高いと見込まれているのは教育 (6.8%)であり、政府官公庁/地方自治体(6.1%)がこれに続くという。

  • 日本の業種別IT支出予測(単位:億円)

    日本の業種別IT支出予測(単位:億円)

2020年のIT支出は、高い成長率を示した2019年からの反動に加えて新型コロナウイルスの影響により、2019年に比べて2.7%減少したという。ニュー・ノーマルへの対応により一部の業種では業績回復の兆しも見られるものの、流行の長期化で多くの企業が当面は手元資金の確保を優先するため、IT投資の回復が本格化するのは2021年秋以降になると見ている。

そのため、2021年のIT支出は前年を上回るものの2020年の減少分を取り戻すまでには至らず、支出規模が2019年の水準に戻るのは2022年以降になる見通しだとガートナーは見ている。

さらに、産業によって業績の明暗が分かれており、2020年に深刻なIT支出に影響を受けた業種は運輸(成長率-12.0%)、小売(同-11.3%)、製造/天然資源(同-9.0%)であった。これらの業種については2021年の成長率も-0.4%、1.5%、1.6%と、市場全体を下回ると予測されるという。

一方で、2020年の成長率が最も高かった教育(6.8%)、政府官公庁/地方自治体(4.3%)は、2021年もそれぞれ6.8%、6.1%と高い成長が見込まれ、電力/ガス/水道(5.0%)、保険(3.4%)、銀行/証券(3.3%)がこれらに続くとしている。

日本のIT支出の最も大きな割合(22%)を占める製造/天然資源の成長率は、2020年の-9.0%から2021年には1.6%とプラスに転じる見通しだが、引き続き市場全体の成長率を下回るとガートナーは予測する。製品需要の低迷からの回復の兆しが一部で見られるものの、半導体不足などのサプライチェーンの混乱が足かせとなり、依然として先行き不透明な経営状況が続いており、コスト最適化と、短期的に高い効果を得られる案件以外は引き続き先送りされる傾向にあるということだ。

投資を再開した一部の企業は、IT投資の優先順位をパンデミックへの対応と回復から生産性とビジネスの成長へとシフトし、競争力を高めているという。IT投資の重点分野として、ライフサイクル全体での製品やサービスの強化、工場/生産/プロセスの自動化、サプライチェーンの再編、持続可能性などを挙げている。