日本電信電話(NTT)とスカパーJSATホールディングス(スカパーJSAT)は5月20日、宇宙事業創出を目指すことに合意し、5月19日に業務提携契約を締結したと発表した。同提携により両社は、宇宙空間でデータ処理する環境の構築に取り組む。2022年から順次技術実証を始め、事業の土台となる技術開発を進め、2025年頃から順次打上・商用開始を目指す方針だ。
今回の両社が実現を目指す「宇宙統合コンピューティング・ネットワーク」は、NTTのNW/コンピューティングインフラと、スカパーJSATの宇宙アセット・事業を統合して構築する新たなインフラ。次世代通信規格(6G)向けの基盤技術と考えられている光通信技術「IOWN(アイオン)」を活用する。
地上から高高度に浮かぶHAPS、宇宙空間の低軌道・静止軌道まで複数の軌道を統合する。また、それらと地上を光無線通信ネットワークで結んでコンステレーションを構成し、分散コンピューティングによってさまざまなデータ処理を高度化する。さらに、地上のモバイル端末へのアクセス手段を提供し、超カバレッジを実現するとしている。
具体的に取り組む予定の事業としては、地上と宇宙のセンシングデータの統合基盤を構築する「宇宙センシング事業」、宇宙における大容量通信・コンピューティング基盤を構築する「 宇宙データセンタ事業」、Beyond5G/6Gにおけるコミュニケーション基盤を構築する「宇宙RAN(Radio Access Network)事業」だ。宇宙で情報収集から価値化までの流れを上記の3つの機能によって実現するとしている。
宇宙センシング事業では、従来の観測衛星による観測データに加え、低軌道衛星MIMO技術によりグローバルに設置されている地上IoT端末データを収集する、宇宙と地球を統合したセンシング基盤を提供する。さらに、テラヘルツ波などにより従来見えなかった情報を可視化する新たなセンシング技術を開発し、宇宙データの価値向上、宇宙データ利活用の可能性拡大につなげていくとしている。
また、宇宙データセンタ事業では、光電融合技術による低消費電力化と高宇宙線耐性の実現により、宇宙におけるコンピューティング処理基盤を提供する。また、光通信技術を活用した分散処理コンピューティングによりさまざまな高度なデータ処理が可能という。
例えば、宇宙で収集される膨大な各種データなどを高速光通信ネットワークを通じて即座に宇宙空間にて、情報集約・分析処理し、情報を必要とするユーザーに必要な情報のみを即座に届けることで、宇宙データ利活用のリアルタイム性、ユーザーの利便性の飛躍的な向上につなげる。
宇宙RAN事業では、Beyond5G/6Gで期待される衛星(低軌道・静止軌道)・高高度の通信プラットフォームを用いたモバイル基地局によるアクセスサービスを提供。例えば、災害時における究極の高信頼メッセージングサービスや超広域カバレッジ化など、モバイル通信の利便性/価値向上を目指す。
両社の役割については、以下の通り。