細胞間脂質の整列性に着目した技術を用いたクレンジングシリーズが登場

資生堂は5月20日、同社のグローバルラグジュアリーブランド「クレ・ド・ポー・ボーテ」の新製品発表会をオンラインで開催し、新たな技術を用いたクレンジング・洗顔シリーズなどを発表した。

  • クレ・ド・ポー・ボーテ

    今回発表された新クレンジングシリーズ6製品。左から「デマキアンYL」、「オーミセラーデマキアントヴィサージュ」、「ムースネトワイアントA n」、「ムースネトワイアントC n」、「ゴマージュアフィナン」、「ランジェットデマキアントヴィサージュ」

今回発表された新たなクレンジングシリーズはいずれも、同社が5月19日に発表したばかりの技術を用いた「レジリロックテクノロジー」が使用されているという。

会見ではレジリロックテクノロジーについて開発を担当した海野祐樹 研究員により技術の説明があった。

それによると、同テクノロジーは、肌のバリア機能に関わる細胞間脂質に着目し同社が開発したテクノロジーで、細胞間脂質の整列性を高めることが確認されたことから、肌のバリア機能を良好に保つことが期待できるとしている。

細胞間脂質は、角層細胞とともに皮膚の最外層である角層を構成するもので、角層細胞の隙間を細胞間脂質が埋めるような構造となっており、隙間なく整列していることで、角層の機能である、肌の水分蒸散を防ぎ外界の刺激から守るバリア機能と、水分を保持して肌のうるおいを保つ保湿機能が維持される仕組みとなっている。

  • 細胞間脂質の構造(イメージ図)

    細胞間脂質の構造のイメージ図 (出所:資生堂)

この細胞間脂質の規則的な配列と秩序ある層状構造は、乾燥や紫外線などの外的要因により乱れてしまうことが知られており、その結果、保湿機能やバリア機能が低下し、体内からの水分蒸散が多くなり、外部から刺激を受けやすくなってしまうことが分かっている。

同社は、北海道大学電子科学研究所との共同研究で、細胞間脂質の整列性を評価する手法を開発し、3次元培養表皮モデルと多光子顕微鏡を用いた実験により、細胞間脂質の整列性を数値で評価することに成功したという。この評価手法は現在、特許を出願中とのことだ。

洗浄力の強い洗顔料の使用でバリア層が乱れてしまうという点を懸念している消費者も多かったが、今回発表されたクレンジングシリーズでは洗うたびにスキンケアのような満足感が期待できると、同社では説明している。

化粧品処方で実用化が難しかった「スポンジ相」を用いたクレンジング製品

今回ミセラータイプのクレンジングウォーターとして発表された「オーミセラーデマキアントヴィサージュ」には、同社が5月18日に発表した「スポンジ相」と呼ばれる構造をもった界面活性剤を水中で生成させる技術を用いた「ネオミセラーテクノロジー」が使用されている。

  • オーミセラーデマキアントヴィサージュ」

    ネオミセラーテクノロジーを用いたクレンジングウォーター「オーミセラーデマキアントヴィサージュ」

今回の発表会では、ネオミセラーテクノロジーについて、開発を担当した渡辺啓 主幹研究員より解説があった。

近年、“ミセラータイプ”と呼ばれる水をベースとしたクレンジングウォーターが多数上市されているが、洗浄後のべたつきの無さなど使用感の良さがある一方、メイク落とし効果において重要な役割を果たす油性成分をほとんど含まないためか、他のクレンジング剤形に比べて洗浄力に懸念を頂く声もあった。

ミセラータイプのクレンジングには「ミセル相」という界面活性剤が集合した会合体が活用されている。ミセル相は球体構造を形成しており、球体の内部にのみメイクなどの油性成分となじむ部分が存在しているため、メイクになじませるのが難しく、洗浄力の課題を抱く要素だった可能性がある。

今回、同社が着目したのは界面活性剤の分子が網目状に集合し、横に広がった状態である「スポンジ相」。網目に広がった構造のため、界面活性剤とメイクがなじみやすくなるという状態だ。

  • ミセル相とスポンジ相の比較

    ミセル相とスポンジ相の比較のイメージ図 (出所:資生堂)

しかし、スポンジ相は化粧品処方中で生成させることのできる組成の範囲がとても狭く、これまで実用化は不可能であると考えられていた。今回開発した技術はこのスポンジ相を水中で生成させ製剤化させるというものだという。

実際に、メイク落としとしての効果検証を行ったところ、同社の従来品と比較して高い洗浄力を確認できたとしている。

  • 従来品とのメイク落ちの比較

    同社の従来品とのメイク落ちの比較 (出所:資生堂)

なお、クレンジング製品は6製品とも6月21日より全国で一斉発売される予定だ。また、今回の発表会では、全30色のルージュ(7月21日発売予定)、ファンデーション(8月21日発売予定)、消毒用ハンドジェル(同)、ベーシックスキンケア「キーラディアンスケア」の限定パッケージ(9月21日発売予定)も併せて発表されている。