興味深い宇宙ベンチャーが登場した。2020年11月に設立されたばかりのAlbedoだ。

彼らの強みはなんといっても10cmの分解能を持つ衛星画像を提供できること。

少し詳しい読者であれば10cmの分解能の衛星画像と聞いて驚くと同時に疑問を抱くだろう。どのようにして10cmの分解能を実現するのだろうかと。

そしてAlbedoは2024年に自社衛星第1号を打ち上げる計画があるようだ。その後、24機の衛星コンステレーションを構築することで、高い空間分解能と時間分解能を持った衛星データビジネスを計画している。今日は、このAlbedoについてフォーカスしたいと思う。

Albedoとは?

Albedoは、2020年11月に設立されたアメリカの宇宙ベンチャー企業で、彼らの主なビジネスは、10cmの分解能の衛星画像にフォーカスした衛星データビジネスだ。すでに現在までに約10億円の資金調達に成功している。 では、なぜ彼らは衛星データビジネスを始めようと考えたのだろうか。

AlbedoのCEOであるTopher Haddad氏は、もともと衛星の光学画像を専門とするエンジニアでLockheed Martinに勤務していた。また、AlbedoのCTOであるAJ Lasater氏も同じくLockheed Martinに勤務し、衛星のシステムエンジニアリングを専門とするエンジニアで、二人とも衛星システムの技術開発にいそしむ毎日だったようだ。

しかし彼らは、せっかく開発した最新の宇宙技術を採用するのに多くの時間がかかりすぎること、コストが高すぎることなどに課題意識を持ったことで意気投合し、Albedoを設立するに至ったという。 そして、CPOを務めるWinston Tri氏は、以前Facebookでソフトウェアエンジニアとして活躍し、業務で衛星画像を高頻度で活用していたという。

しかし、高分解能の衛星画像のプロセスやコストといった課題に疑問を持ち始め、Topher氏やAJ氏とともにAlbedoにジョインしたという経緯がある。 では、Albedoのビジネスの詳細について次で詳しく見ていこう。

アメリカで投資家として著名なGarry TanによるAlbedoの紹介動画

10cm分解能の衛星画像はどう実現するのか?

Albedoの商材を少し詳しく説明すると、パンクロ(白黒)画像の分解能は9,8cm、マルチスペクトル(カラー)画像の分解能は39,2cmの画像を提供することができるという。

  •  Albedoが実現しようとしている10cm分解能画像のイメージ

    Albedoが実現しようとしている10cm分解能画像のイメージ(出典:Topher Haddad氏Twitter)

では、彼らは、どのようにして10cmという高分解能な衛星画像を実現しようとしているのか。

これまでの一般的な光学のリモートセンシング衛星は、低軌道LEOで地球を撮像するのだが、どんなに高分解能の大型衛星でも30cm程度がMAX。しかし、Albedoは、地球により接近した大気が少しあるような非常に低い高度の軌道に衛星を投入することを考えているようだ。

大気があり、原子状酸素も多い軌道なので、熱設計や原子状酸素対策が必要不可欠だろう。そして、そのような軌道を選択する上で、衛星に電気推進を採用するという。

低推力・高効率の電気推進を採用することで、大気からの浮力をうまく利用し可能な限り長く飛行できるよう工夫するようだ。

そしてAlbedoは、MAXARやOrbit Fabなどが計画している軌道上衛星燃料注入サービスについても期待しているようだ。もしAlbedoの衛星の電気推進の燃料が枯渇したら、軌道上衛星燃料注入サービスを受けたいという。 他にも、遠赤外線領域のカメラも搭載して、2m分解能の熱画像を提供することができるという。

このような高分解能画像と熱画像を使って、例えば以下のように送電線付近の植生管理に活用するイメージがあるようだ。送電線付近に接触している木々は山火事の原因の一つになっているようで、この課題に解決策を提供できる。

  •  Albedoの送電線周辺の画像イメージ

    Albedoの送電線周辺の画像イメージ(出典:Albedo)

もう一つ、紹介したいことがある。それは、Albedoの衛星画像の時間分解能だ。Albedoは、最初に2024年に最初の衛星を打ち上げ、そして同年内に数個の衛星を打ち上げる予定だ。

そして、最終的には、2027年までに24機の衛星を打ち上げ、コンステレーションを構築する予定のようだ。Albedoのホームページには、Revisit Rateが、2 - 3 revisits / dayと記載されている。つまり24機の衛星で1日に2、3回は同じところを撮影することができるようになるのだ。これも実はすごいことだ。

衛星画像市場の課題を解決するAlbedoのビジネスとは?

では、彼らはどのようなビジネスを計画しているのだろうか。

まず、Albedoでは、衛星画像の入手を簡単にすることとスピーディーにすることを重視している。 従来では、一般的な衛星画像を入手する際には数ヶ月かかることがある。理由は、衛星画像を販売する企業の営業の担当者と衛星画像取得に関する衛星画像の要求や条件、交渉などに時間を要するためだ。

そのため、Albedoでは、営業担当者は存在しない。衛星画像は、STAC準拠でアーカイブから閲覧することで、簡単に購入もしくは注文することができる。そして、APIまたはWebベースのダッシュボードから衛星画像を選択することで容易に入手できる。

そして衛星画像を購入するために必要なのはクレジットカードだけで、衛星の購入頻度によって3種類の料金設定が準備されている。衛星画像1km2あたり0.25ドル〜15ドルの記載があり、とても低価格だ。

しかも1km2単位で購入できる点も正直、衛星データ市場では新しい。このようにAlbedoでは、新しい衛星画像をいつ収集するかを迅速にわかりやすく購入者が判断できるよう、選択、購入、入手までのプロセスの透明性を高めることを重視している。

そして、オルソ画像(真上から見たような傾きのない、正しい大きさと位置に表示されるよう変換した画像)には、ARD(Analytics Ready Data)という分析準備完了データも提供している。

正直なところ、AWS Ground stationやMicrosoftのAzure Orbitalなどの大手クラウドベンダーのサービスが先行し成功している。しかし、Albedoは、同じ領域でもあくまで衛星画像の分析を行わず、衛星画像プロバイダーとして衛星画像をより品質良く、より安く、より迅速に販売するというニーズ・オリエンテッドな部分を強みにビジネスを展開していくという。

不動産保険会社、地図会社、電力会社、その他大企業が顧客になると見込んでいて、すでにそのような顧客のサポートの事例があるようだ。

事例のひとつに、世界中の温室効果ガス排出量を監視するツールを構築しているClimate TRACEとの取り組みがある。Albedoは高分解能画像と熱画像の衛星画像によって、二酸化炭素の排出量の算出に貢献しているという。

  • 衛星画像から二酸化炭素の排出量を計算

    衛星画像から二酸化炭素の排出量を計算(出典:Albedo)

いかがだっただろうか。衛星データビジネス市場におけるニーズ・オリエンテッドな宇宙ベンチャーが登場した。衛星データ市場に革命を起こすことができるか、Albedoを今後もウォッチしていきたい。