東洋紡、富山大学、日本医療研究開発機構(AMED)の3者は5月17日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の「イムノクロマト法」による抗原迅速検査キット「イムノアロー SARS-CoV-2」を開発し、5月12日に厚生労働省より製造販売承認を取得したことを発表した。6月中に医療機関および検査施設向けに販売を開始する予定としている。
同製品の開発は、AMEDの2019年度「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業」(2次公募)「SARS-CoV-2の臨床現場即時検査法開発に関する研究」の支援を受けて東洋紡によって行われた。基本性能評価試験を、国立感染症研究所 感染病理部の鈴木忠樹部長、富山大 学術研究部工学系の磯部正治教授、同・黒澤信幸教授、そして東洋紡による共同実験で実施された。また臨床性能評価試験は、京都大学大学院 医学研究科 臨床病態検査学の松村康史准教授と、東洋紡との共同研究にて行われた。
SARS-CoV-2の感染制御には、ウイルスを排出している感染者を迅速に見つけて隔離することが重要とされている。そこで求められているのが、短時間で測定結果を出せる抗原検査キットとなる。
従来の抗原検査キットも30分ほどで測定結果を出せるようになっているが、さらなる時間短縮が求められていた。また従来の抗原検査キットは感度の低さと、偽陽性が発生するという課題を抱えており、それらを解決する必要もあった。それらの課題を解決するための鍵とされたのが、高い特異性と結合能を兼ね備えた抗体をいかに取得するかにあったという。
そうした中、独自に開発した抗体取得技術を有していたのが、富山大の磯部教授と黒澤教授らの研究チームだ。免疫されたさまざまな動物種から多様性に富んだ数多くの抗原特異的モノクローナル抗体を5日間で取得することを可能とする技術で、この技術を用いて、SARS-CoV-2に対する高い特異性と親和性を兼ね備えた、独自抗体の開発に成功したという。
なお今回の検査キットでは、鼻咽頭ぬぐい液および鼻腔ぬぐい液からSARS-CoV-2抗原を検出するのに要する時間は、従来比で半分となる約15分とされているほか、特別な診断機器を必要としないことから、幅広い医療施設での検査が可能となるという。
製品は1箱に10回分が同梱されており、希望価格は6万6000円としている。