東京理科大学発ベンチャー企業のイノフィス(東京都新宿区)は、2021年5月17日に腕上げ作業支援向けの新製品「マッスルスーツ GS-ARM」の販売を開始したと発表し、その製品仕様などを公表した。
同製品は、肩、腕、背中、腰のフレーム分で構成された本体を背負って身体に装着し、その構成された本体を各ベルトで上腕や背中、腰などの身体に固定する仕組みになっている。
「上向き姿勢の腕には片腕当たりに約44.1N(4.5kgf)の最大補助力を発揮する作業用支援ロボットだ」と、イノフィスの折原大吾代表取締役社長は説明する。製品は身体の大きさに合わせ、SサイズとMLサイズのラインナップを有する。製品寸法はSサイズで460×440×160mm、MLサイズで510×525×165mmで、カバーを含んで質量は3.2kgになっている。
具体的な利用用途での支援作業としては、ブドウやナシといった果樹栽培時の摘花や剪定(せんてい)などの農作業支援向けや、建築物の施工時や点検時をはじめとした土木・建設作業支援向けなどの上向き姿勢の腕を支援する作業用支援ロボットを想定している。今回の新製品説明会では、ネクスコ東日本エンジニアリング(東京都江戸川区)の女性作業員が装着し、トンネルなどの上部の打音検査時に、上向き作業を長時間アシストする現場利用シーンが動画として紹介された。
一番の特長は電気モーター支援の仕組みではなく、“ガススプリング”と呼ぶ支援アクチュエータを用いている点だ。これまでも、同社の主力製品である腰を支援する「マッスルスーツEvery(エブリイ)」には電力不要の McKibben式人工筋肉がアクチュエータとして用いられており、折原社長は今回の製品について「これまでの電力不要という伝統を受け継いでいる」という。
ガススプリングは、装着した腕を持ち上げると、高圧N2(窒素ガス)を封入した鋼製シリンダーが押し込まれるように働く動作によって、高圧N2ガスが圧縮されて元に戻ろうとする反発力が働く仕組みを利用している。具体的には、ガススプリングに接合したロッドがその方向に働く、4点の支点で動く4節スライドリンク機構になっている。
この4節スライドリンク機構によって装着した腕パッドに上向きの力を発生させ、上向き作業を支援する仕組みになっている。この結果、装着した腕を上下、左右、斜めと各方向に支援する。
同社の創業者(ファウンダー)である小林宏取締役は「この“ガススプリング”は既存の乗用車のバックドアを上げる際に利用されているガス系ショックアブソーバーを基に改良したものを採用し、既製品としての信頼度が高いものを採用している」と説明する。
信頼性とコスト面で熟成した部品になっているようだ。また、「4点の支点で動く4節スライドリンク機構はアルミニウム合金製のフレームで支えている」という。これも生産コストを考慮した材料選択になっている。
マッスルスーツ GS-ARMには左右に1個ずつ“ガススプリング”を採用している。この“ガススプリング”は使用1年で内部の窒素ガス圧の低下を考慮して、交換を推奨する仕組みになっている(新製品には、購入後3カ月以内に製品登録すると、1組のスペアーガススプリングを提供する予定)。
同製品の生産は、リコーエレメックス(愛知県岡崎市)に委託する(同社は「マッスルスーツ Every」の生産も行っている)。 販売価格は13万2000円で、国内の販売代理店から販売する。
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