半導体市場動向調査会社である台TrendForceによると、2021年第1四半期のDRAM市場は、コロナ特需に加え、中国のスマートフォン(スマホ)ブランドによる調達の動きが活発化した結果、DRAMサプライヤからの出荷は予想を上回り、価格も上昇基調となった結果、前四半期比8.7%増の192億ドルとなったという。

価格の回復がDRAMサプライヤ各社の業績を押し上げ

2021年第1四半期において、3大DRAMサプライヤともに、平均販売価格とビット出荷数量の両方を上昇させた。その結果、各社の売上高はSamsung Electronicsが前四半期比8.5%増、SK Hynixが同6.9%増、Micron Technologyが同9.6%増となった。各社ともに売り上げを伸ばした結果、市場シェアについてはほとんど動きがなかったという。

また、利益率に関しては、Samsungは1Z nmプロセスでの大量生産を開始したばかりで歩留まりはそれほど高まっていなかったことから、前四半期比2ポイント減の34%と下がった一方で、SK Hynixは新プロセスにおける歩留まり改善が進んだことから、同3ポイント増の29%となった。また、会計年度が異なるMicronは、2020年12月から2021年2月までが対象だが、同5ポイント増の26%となった。

2021年第2四半期にはさらに市場拡大の期待

2021年第2四半期に入ってもPC、モバイル、グラフィックス、特殊用途のいずれのDRAMも需要が堅調に推移しているという。中でも一部のサーバメーカーが、DRAM価格が継続的に上昇することを危惧して、調達活動を活発化させており、こうした動きからTrendForceでは、同四半期のDRAM平均販売価格はさらに上昇すると予測しており、ビット出荷数量の増加と併せると、同四半期のDRAM市場は前四半期比20%以上の増加となる可能性があるという。

そのため、TrendForceでは3大サプライヤともに歩留まりの向上も併せ利益率の向上、利益の増加が図られ、中でも1Z nmプロセスの歩留まりが安定するであろうSamsungは高い成長が期待できるとしている。

  • DRAMサプライヤ売上高

    2021年第1四半期のDRAMサプライヤ各社の売上高 (出所:TrendForce)

3大サプライヤ各社ともに下半期に生産能力を拡充へ

3大DRAMサプライヤ各社は、生産能力の拡張とプロセスの微細化を進めることで、需要の増加に対応してきた。例えば下期に向けSamsungでは、Line 13の生産品目を従来のDRAMからCMOSイメージセンサへと変更しようとしていたが、これを遅らせるほか、韓国・平沢市のP2Lファブの生産能力を2021年末までに拡充する計画としている。

また、SK HynixもM10ファブのDRAMからロジックICへの転換を遅らせるほか、2022年の設備投資の一部を2021年に前倒ししようとしているという。また、新工場であるM16ファブにおけるDRAMのウェハ投入数ががわずかに増加する可能性もあるという。

Micronは、1Z nmならびに1αnmプロセスの比率を高める取り組みを進める一方で、生産能力の拡充そのものはあまり積極的に進めていないという。

また、3大サプライヤ以外となる台湾勢は、特殊DRAMの大幅値上げ、並びに需要が高い製品を重視するよう構成比率の変化を図ることで、売上高、利益率ともに大きく向上させることに成功しているという。