ベルギーimecと、化合物半導体向けMOCVDプロバイダの独AIXTRONは、200mm QST基板上に動作電圧1200V、絶縁耐圧1800V超のGaNバッファ層を形成することに成功したと発表した。
QSTは、Qromis Substrate Technologyの略で、米Qromisが販売している独自開発の基板。熱膨張係数が通常のGaN-on-Si構造のものよりもGaNの熱膨張係数に近いため、基板上により厚いエピバリア層を熱歪なく形成でき、絶縁耐圧を1800V以上に高めることができるという。imecのシニアビジネス開発マネージャーであるDenis Marcon氏は「GaN-on-Si構造では、動作電圧650Vまでのデバイスは製造できるが、1200Vを実現するためにはGaN-on-QST構造が必須であることが分かった」と説明している。
次世代パワー半導体として期待されるSiCとGaNだが、SiCは1200Vでの駆動が可能である一方、GaNは650Vまでの駆動と分けられていた。しかし、SiCは小口径で高価という課題が、GaNは650Vを超す電圧で動作させるためには、200mmウェハ上に十分な厚さのGaNバッファ層を成長させる必要があるが、それが難しいという課題があった。
今回の研究は、そうしたGaNの課題を解決することを目的に実施。実際に、25℃と150℃で200mm QST基板上に、耐圧1800V以上で1200V動作に適したGaNバッファ層のエピタキシャル成長を行うことに成功したという。Marcon氏は、「GaNは、大きなウェハで処理可能であるため、本質的に高価なSiCと比較してコストメリットを出すことができる」と述べている。
高い絶縁破壊電圧を達成した鍵は、200mm QST基板を使用することと複雑なエピタキシャル材料スタックの手法だという。特にQST基板は、高温で熱膨張をするので 厚いGaN/AlGaNエピタキシャル層の熱膨張と厳密に一致するように工夫する必要があったという。