月面の全体に地球の影が落ちる「皆既月食」が26日に起こり、好天なら全国で特有の赤みを帯びた月が観察できる。今回は2021年で地球に最も近く大きな満月となり、「スーパームーン」とも呼ばれる現象と重なる珍しい機会で、話題となりそうだ。

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    5月26日の皆既月食の概要(国立天文台提供)

国立天文台の資料によると同日の月は、満月の状態から午後6時45分に欠け始めて部分食が始まり、9時53分に満月に戻る。その間の8時9~28分に皆既食となる。南東付近の空の低い位置にあり、全国で観察できる。ただし北海道西部や東北地方西部、中部地方西部、西日本では食が始まってから月が昇る「月出帯食(げつしゅつたいしょく)」となる。

月が地球の周りを公転する軌道は楕円で、また太陽や地球などの引力の影響を受けるため、地球との距離は変動する。今回の月食当日は地球と月の中心を結んだ距離が約35万7000キロで、2021年で地球に最も近いスーパームーンとなる。12月19日の満月が最も遠く同約40万6000キロ。ただし並べて比較できないため、明るさや大きさの違いに気づくことは難しい。

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    赤みを帯びた過去の皆既月食(国立天文台提供)

皆既月食では月が地球の影に完全に入り込むが、真っ黒で見えなくなるのではなく、赤銅色などと呼ばれる赤みを帯びる。夕日が赤いのと同様、太陽光のうち波長の長い赤い光が散乱しにくく地球の大気を通過するためだ。また大気がレンズのようになって太陽光を屈折させるため、赤い光が皆既食中の月面を照らす。大気中のちりの量などにより毎回変わる微妙な色合いが、皆既月食の見どころの一つとなる。

月食は太陽光が当たる地球の影の中を月が通過することで、地球から月が欠けて見える現象。太陽と地球、月が一直線に並ぶ満月の時に起きる。ただし地球から見た月の通り道(白道)が太陽の通り道(黄道)に対し少しずれているため、満月は地球の影からずれた所を通ることが多い。このため、満月の度に月食が起こるわけではない。

太陽が欠けて見える日食では、月が地球に落とす影の範囲が限られるため、観察できる地域は限られる。これに対し月食は月面に地球の影が落ちる現象なので、発生時間帯に月が見える場所ならどこでも見える。

11月19日にも部分月食があり、欠けずに残る部分がごくわずかで皆既食に極めて近いものとなる。観察にあたっては新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染防止のため遠出は控え、他人との接触を極力避けたい。

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    皆既食中の月が赤く見える理由(国立天文台提供)

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