コロナ禍でテレワークが広がったことにより、家具や文房具に対する注目度が高まっている。こうした事情と相まって、キングジムが今年3月に発売を開始した“自立する”クリアーファイル「ジリッツ クリアーファイル」が、多くの反響を呼んでいる。そこで、同商品を開発した多賀谷彰氏に話を聞いた。
「ジリッツ クリアーファイル」の特徴とは?
まずは、「ジリッツ クリアーファイル」を紹介しよう。同商品は、ファイルの表紙に内蔵されたスタンドで“自立する”クリアーファイルだ。書類を見ながら仕事をする時、「立てて見たい」と思ったことはないだろうか? または、ファイルボックスなどを使って書類を立てたものの、固定されずにイライラしたことがある人もいるだろう。
「ジリッツ クリアーファイル」はスタンドが安定しているので倒れることはないし、手元にある書籍などやスタンドは表紙と一体化して内蔵されているので、持ち運びや収納する際は場所をとらない。ページを180度に開いた状態で立てることができ、さらに立てたままページをめくることが可能だ。
また、ファイルを自立させることで、平置きする場合と比べて、デスクにおける専有面積を減らすことができる。机の上が整理整頓されている人には無縁の話かもしれないが、机にいろいろなモノが載っている人にとっては、ありがたいだろう。
スタンドの仕掛け、ファイルが立つ角度に一苦労
多賀谷氏によると、「ジリッツ クリアーファイル」の開発はコロナ禍前より行われていたそうだ。てっきり、テレワークの普及で、自宅で仕事をする人が増えたことを見据えての商品だと思っていたので、少し意外だった。「新製品の打ち合わせの現場の取材を受けている時に、私が思いついたのがきっかけです」と、多賀谷氏は話す。
しかし、製品化に漕ぎつけるまでには大変な苦労があったという。スタンドをどのような形にして、どのような形態で収納するかについて、試行錯誤が行われた。設計担当の方と二人三脚で、開発に取り組んだそうだ。
「今の形に行き着くまでに、『ああでもない、こうでもない』と、何十回もいろいろなパターンを作りました。スタンドを隠すために、表紙が2枚になっているのですが、まったく考えてもいませんでした」と多賀谷氏。
また、ファイルが立つ角度にもこだわったそうだ。「写真立て程度の角度を想定していましたが、2mm違うだけで角度が変わるので、ベストの角度を見つけるまで、苦労しました」と、多賀谷氏は語る。紙をめくっても、さらに、片側に寄せても倒れないような工夫も凝らされているという。
Twitterでも3000件のリツイートと大きな反響
小誌でも、「ジリッツ クリアーファイル」のニュースを掲載したところ、多くの読者の方に読んでもらえた。同様に、キングジムの公式Twitterでも大好評だったという。
もともと、41.3万のフォローを誇るキングジムのTwitterは企業の公式アカウントとして、注目を集めているのだが、「ジリッツ クリアーファイル」については、3000のリツイートがあったそうだ。通常のファイルの新製品に対するリツイートは数百程度のことが多いそうなので、その人気ぶりがわかる。ちなみに、商品のクオリティもさることながら、自立するファイルをもじった「ジリッツ」も「キングジムらしい」とウケていたとのことだ。
用途としては、オフィスでの利用にとどまることなく、家庭や楽譜やレシピを閲覧する際にも重宝されているとのこと。確かに、レシピサイトが活況の今、キッチンで印刷したレシピを見ながら料理ができたら便利だ。
「商品開発にあたっては、時間をかけてでも、できる限りリスクをつぶすようにしています。『こんな商品になるのでは』と想像していても、作ってみると違うことは多々あります。前提がないものを作ることは大変です。次も、テレワークを快適にする商品を開発したいと思います」と語る多賀谷氏。
文房具の中でもどちらかと言えば脇役ながら、なければ困るクリアーファイルに付加価値をつけることで、ヒット作を生み出したキングジム。多賀谷氏の話をうかがって、あらためて、新商品を生み出す苦労を知った。これからも、「あったらいいな」を実現してくれることを期待したい。