OpenShiftをもっと簡単にする3つの新サービス
Red Hatはここ数年、「オープン・ハイブリッドクラウド」という戦略に基づき、ビジネスを推進している。この戦略は、パブリッククラウド、プライベートクラウド、ベアメタルといった複数の環境が混在した環境を現実解としつつ、構成要素にはオープンソースソフトウェアを採用するというものだ。顧客の要望に迅速に応えるとともに、オープンソースソフトウェアのエコシステムも推進する。
顧客にとってもオープンソース・ソフトウェア・エコシステムにおいても、利益のある状態を取る、これがオープン・ハイブリッドクラウド戦略の要だ。
そして、このオープン・ハイブリッドクラウド戦略において、重要な役割を果たしているプラットフォームが「Red Hat OpenShift」だ。Red Hatは4月27日(米国時間)、バーチャルイベントとして開催されている「Red Hat Summit 2021」において、このOpenShiftを強化する次の3つの新しいマネージドクラウドサービスを発表した。
- Red Hat OpenShift Streams for Apache Kafka
- Red Hat OpenShift Data Science
- Red Hat OpenShift API Management
発表された3つの新サービスはRedHat OpenShift Dedicatedと統合されており、ハイブリッド環境でクラウドネイティブアプリケーションを開発するために適した機能を提供してくれる。クラウドネイティブアプリケーションの開発、デプロイ、管理、スケールなどにおいて、開発者の生産性を犠牲にすることなく、運用の複雑さを低減するように設計されている。以下、これら新サービスを紹介しよう。
Red Hat OpenShift Streams for Apache Kafka
「Red Hat OpenShift Streams for Apache Kafka」は、リアルタイムのデータストリームを簡単に扱えるようになるサービスだ。リアルタイムデータは機能的なハイブリッドクラウドアプリケーションにおいて重要なコンポーネントであり、Red Hat OpenShift Streams for Apache Kafkaを使うことで、データソースがどこに存在しているかに関係なく、簡単にこうしたデータの作成や接続ができるようになる。
本稿執筆時点で、開発者向けのプレビュー版が提供されており、2021年後半の一般提供が予定されている(参考「Introducing Red Hat OpenShift Streams for Apache Kafka」)。
Red Hat OpenShift Data Science
「Red Hat OpenShift Data Science」は、機械学習モデルの開発、トレーニング、テストを迅速に行うことができるサービスだ。インフラストラクチャを用意する必要がなく、成果物はコンテナ対応形式でエクスポートすることもできる。Open Data Hubプロジェクトの成果物に基づいて構築されている。
本稿執筆時点で、アドオンとしてデータ版が使用できる状態になっており、2021年後半での一般提供が予定されている(参考「Introducing Red Hat OpenShift Data Science」)。
Red Hat OpenShift API Management
「Red Hat OpenShift API Management」は、APIファーストでマイクロサービスベースアプリケーションを提供するまでの時短を実現するサービス。Red Hat OpenShift DedicatedおよびRed Hat OpenShift Service on AWSにおいて完全なAPIのライフサイクル管理を提供する。
この機能を利用することでインフラストラクチャではなく、APIファーストでマイクロサービスベースのアプリケーション開発、管理、スケールに集中することができる。
Red Hat OpenShift API ManagementはすでにアドオンおよびAWSのRed Hat OpenShift Serviceにおいて利用可能な状態になっている(参考「Introducing Red Hat OpenShift API Management」)。
クラウドの複雑さの低減、これが今後のカギ
コロナ禍において、企業はますますクラウドサービスを利用するようになっている。クラウドサービスはシステム開発やサービスの提供までに必要となるインフラストラクチャのセットアップの手間を省けるため、迅速に開発や運用へ結びつけることができる。さらに、多くのサービスがクラウドサービスの形態で提供されており、サービスを組み合わせることで新しいサービスの開発が可能な状況が揃そろってきている。
一方、組み合わせるサービスやAPIの増加、増え続けるサービスなどによって、クラウドサービスの管理の負担が増え続けている。利用できるサービスが増えることは好ましいことだが、複雑性が増加することは好ましくない。
今回Red Hatが発表したサービスはRedHat OpenShift Dedicatedと緊密に統合されており、既存のポートフォリオはそのままに、その複雑性を削減することを目指したサービスが統合されたもののように見える。
これからも、クラウドサービスの利用は増加していくだろう。それに合わせて複雑さも増すことになる。つまり、今回Red Hatから発表されたフルマネージドのクラウドサービスは必要性が増していくことが予想される。既存のポートフォリオの複雑性を上げることなる新しい機能をいかにして取り込んでいくか、このことが今度さらに重要になっていくだろう。