SK Hynixの副会長兼Co-CEOとSK Telecomの副会長兼CEOを兼務し、両社の事実上の最高責任者であるPark Jung-ho(李正浩)氏は、韓国で開催されたWorld IT Show 2021の会場にて「世界的な半導体不足に対処するためSK Hynixはファウンドリ事業を強化する必要がある。SK HynixがTSMCと同じくらいの競争力を持つようになれば、韓国内のファブレス企業はより多くの技術とサービスを開発できるようになるだろう」と記者団に述べたと韓国の多数のメディアが報じている。
SK Telecomは現在、通信キャリアからの脱却に向け、半導体ファブレス事業をはじめとして、さまざまな新規事業に参入し、社名さえ変更しようとしているという。最近も独自のAIチップ「SAPEON」を設計しAI半導体市場に参入している。しかし、SKグループ内では先端ロジックデバイスを自前で製造することはできず、TSMCに製造委託をする形となっている。こうした背景のため、同氏は、SK Hynixの副会長に就任して以降、ファウンドリ事業の強化に向けた戦略を練っているようだ。同氏が、ファブレスと半導体メーカーの双方のトップを兼務していることを考えればSKグループ内ですべてを完結したいと考えるのは自然だろう。
しかしSK Hynixのファウンドリ事業の売り上げは、総売上高の数%にすぎず、ファウンドリビジネスを強化しTSMCに対抗しようとしているSamsungにくらべてその存在感はほとんどないのが現状である。SK Hynixのファウンドリビジネスは、SK Hynix System ICという子会社として運営されており、200mmのレガシーファブで、ディスプレイドライバICやパワー半導体などの製造を行う程度で、韓国内ではSamsung Foundryと競争できるはずもなく、事業拠点を中国無錫に移している。
一方でSK Hynixは、2020年にMagnaChipからスピンオフしたファウンドリであるKey Foundryの49.8%の株式を購入したが、こちらも200mmのレガシーファブしか持っておらず、SK Telecomが設計する先端AIチップの製造はできない。
SK Hynixは、DRAMならびにNANDでは買収を含め、さまざまな動きを見せているが、ロジック半導体の設計や製造に関する専門家がほとんどいないため、ファウンドリビジネス強化にむけてさらに大型のM&Aに乗り出すのではないかと韓国半導体関係者は見ているが、その一方で、SK Hynixは、IntelからのNAND事業買収やキオクシアのIPO(あるいは米国企業による買収)など直近の案件を抱えていることから、ファウンドリの強化策はまだ検討段階との見方もあるようだ。