ASMLは4月21日に開催した2021年第1四半期業績発表において、EUV露光装置の出荷台数について、2020年度は31台(実績)であったものが、2021年は約40台、2022年は約55台 、2023年はそれ以上との見通しを明らかにした。当面の目標は60台としている模様だという。

また、2022年度に出荷される予定のEUV露光装置はすべて「TWINSCAN NXE:3600D」という最新機種となる予定で、ウェハ処理能力は前世代比で15~20%向上するとされている。

半導体業界においてEUV露光装置の重要性がさらに増すと見られており、すでに2月にはSK Hynixが先端DRAM製造に向けてASMLと5年間のEUV露光装置の購入契約(4500億円前後)を締結したほか、同じく3月には、Intelが7nm CPUの製造にEUV露光装置を本格的に活用していくことを明言している。加えて4月、Nanya TechnologyがEUVを採用したDRAMの製造に向けた新ファブ建設を発表している。これまでEUVを活用してきたTSMCもSamsung Electronicsも増産に向け、EUV露光装置の導入を加速させる見通しであり、今後、EUV露光装置の奪い合いが起こる可能性が高く、ASMLは増産を進める必要性に迫られるのではないかと業界関係者は見ている。

こうしたEUV露光装置への需要の増加を踏まえ、米Wall Street Journal(WSJ)が、ASMLの時価総額が2570億ドルとなり、欧州最大のハイテク企業になったと伝えている。売上高世界トップの半導体製造装置メーカーであるApplied Materials(AMAT)の時価総額が1180億ドルであることを踏まえると、倍以上の差があることとなる。この理由についてWSJでは、装置単価がEUV露光装置はほかの装置よりもけた違いに高く、かつ完全な独占状態であるためだとしている。

なお、2012年、Intel、TSMC、Samsungの3社は、共同で450mmウェハ対応EUV/DUV露光装置の開発をASMLに依頼するのに併せて、ASMLから開発費の提供と株式の購入を求められた。その後、紆余曲折を経て450mmプロジェクトそのものが立ち消えとなり、IntelやTSMCはASML株のほとんどあるいはすべてを売却してしまったが、Samsung は3630億ウオン(約353億円、2021年4月レート換算)で購入した株を保持し続けており、その価値は現在4兆4357億ウオン(約4313億円、同)まで上昇したという。

2020年に、Samsungの李副会長が新型コロナによる出入国規制の中、オランダのASML本社に赴き直談判して、EUV露光装置の購入にこぎつけられたのも、このようなSamsungとASMLの長きにわたる関係によるところが大きいと韓国の半導体業界関係者は見ているという。