九州大学は4月22日に、公益財団法人九州先端科学技術研究所(ISIT、福岡市)と共同で、新しいデジタル・トランスフォーメーション(DX)手法を実践する産学連携プラットフォーム(オープンサイエンスプラットフォーム:OSP)を本格稼働させたと公表した。

九大は、このOSPを「多様な知の集約により既成概念を超えるデザイン思考とデータを活用する新しいデジタル・トランスフォーメーション手法を組み合わせて、新産業を興すことにつながる新規事業の立ち上げを図る点に特徴がある」と説明する。

九大工学研究院応用化学部門を中心とする研究グループは、「日本で新しい価値創造を生み出す産業分野はヘルステック市場での新産業を興すことにある」と予測し、数年前から工学研究院応用化学部門と企業数社が共創コンソーシアムを組んで新産業の立ち上げを図ってきた。背景には、日本は先進国の中でも長寿命化が急速に進み、高齢者の人口比率が高まり、高度な医療態勢・医療技術を持っていることから、ヘルステック市場は成長分野になると推定できることがある。この共創コンソーシアムは、公益財団法人九州先端科学技術研究所が設けた産学連携プラットフォーム内で進めてきたものだった。

今回、九大工学研究院応用化学部門を中心として稼働するOSPでは、その事業シーズを九州大学病院(九大病院)が持つ医療データなどの強力な研究シーズを具体化するデータ・根拠に据えてきた。

九大病院が持つ医療データは一般的には、企業はアクセスできないが、個人情報などを匿名化し新産業を興すための研究シーズデータとして利用できる形態に加工して用いる模様だ。

また、、傘下にスーパーや物流センターなどの小売業拠点を日本全国に多数展開しているトライアルカンパニー(福岡県福岡市)が持つ消費者の購入データを“ニーズ源”として活用し、多くのユーザーの消費データというニーズデータをリアルタイムにつかみ、「ヘルステック市場での消費行動を予測するDX手法によって新規事業を興すことを図る点に新規性がある」と説明する。

具体的なDX手法は、九大工学研究院応用化学部門などとOSPを組む相手企業に公開している。

この膨大な購買データと九大病院のメディカルデータというビッグデータの提供を受け、九大工学研究院応用化学部門野の研究者と企業9社は、ヘルスケア分野での成長する事業の立ち上げを図る仕組みだ。

さらに、九大は「この企業9社は九大内にある研究シーズにもアクセスでき、新規事業を興す際のシーズとして検討できる点が大きな利点になっている」と態勢について説明する。