シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアの一部門であるシーメンスEDA(旧メンター・グラフィックス)は4月21日、旧メンター時代から提供してきたIC(SoC)設計のためのハードウェアエミュレータ「Veloce」を、包括的なハードウェア支援検証システムへと発展的進化させたことを発表した。
これにより、次世代の仮想プラットフォーム、ハードウェア・エミュレーション、FPGAプロトタイピング技術がシームレスに統合されることとなり、Veloceは単なるハードウェアエミュレータではなく、さまざまなIC設計ニーズに対応することが可能となった統合ソリューションとなるという。
今回、Veloceが統合ソリューションへと発展することとなった背景には、近年、半導体が従来以上に複雑化し、半導体設計検証環境にかかる費用が増加してきたこと、またハードウェアでの検証に必要な費用も増加しているが、それ以上にソフトウェアの検証にかかる費用が増加していることなどがあるというほか、その一方で単純に半導体単体ではなく、それを搭載した全体的なアプリケーションにおいて、ピーク性能だけではなく、システムの全般的な稼働を通じてパフォーマンスを得られるのか、といった検証なども求められるようになってきたことなどがあるという。
そのため今回Veloceには以下の4つの製品が追加されることとなる。
- Veloce HYCON
- Veloce Strato+
- Veloce Primo
- Veloce proFPGA
Veloce HYCON(HYbrid CONfigurable)は仮想プラットフォームおよびソフトウェア対応検証のためのソフトウェアで、いずれのVeloceハードウェアでも、同じソフトウェアスタックを使用することを可能としたとするほか、登録されている最新のプロセッサモデルや仮想CPUをベースとしたプラットフォームを構築できるので、開発しているIPなどと組み合わせて、ICとして形になる前からハードウェアの検証やソフトウェアの開発を可能とするという。
Veloce Strato+は、大規模エミュレーション・プラットフォームであった「Veloce Strato」の後継機で、最大150億のエミュレーションゲートをサポート可能とすることで、開発期間の短縮を可能とするとしている。
Veloce Primoは、エンタープライズ向けFPGAプロトタイピングソリューションで、XilinxのVirtex UltraScale+ VU19P FPGAを最大320個搭載でき、80億ゲート、70MHz以上のパフォーマンスをサポートすることで、高速なプロトタイピングを実現するとする。
そしてVeloce proFPGAは、同じくVU19Pを1つ搭載したシングルユーザーでの利用を想定したデスクトップFPGAプロトタイピングボードで、複数枚を活用してゲート数の向上によるさまざまな設計ニーズに対応できるほか、さまざまなコネクタを有しているので、拡張用デバイスなどを接続して、その動作を試す、といったことも可能なほか、カメラやPCI Expressを介してほかのCPUで動作させる、といったこともできるとしている。
このproFPGAはPro DesignのOEM品だが、OEM供給としてはハードウェアのみで、OSなどのソフトウェアはシーメンスEDAのものを活用することになるという。また、Pro DesignはIntel(旧Altera)のFPGAを搭載したボードも提供していることもあり、シーメンスEDAでも顧客の指定があれば対応するとしている(指定がなければXilinxを推奨)。
なお、今回発表されたハードウェア、特にVeloce Strato+は規模やアプリケーション環境で価格が変わるが、購入のほか、単純な期間を定めたリース契約や、シーメンスEDAが設置場所も貸与し、それをリモートで使用する形でのリース契約なども用意しているという。