信州大学 医学部 分子病理学教室の中山淳 教授らの研究グループは、コレステロールの類似物質である「コレステノン」がピロリ菌に対して抗菌活性を示すことを確認したと発表した。

同研究は、中山教授のほか、信州大学 医学部 分子病理学教室 兼 同内科学第二教室の小林惇一氏、信州大学 医学部 分子病理学教室の川久保雅友氏、同有坂宣彦氏、同宮下聖基、同佐藤佳子、同小村仁美、同的場久典氏、信州大学 医学部 分子病理学教室 兼 同先鋭領域融合研究群 バイオメディカル研究所の藤井千文氏によるもの。詳細は4月14日(米国時間)に 「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS:米国科学アカデミー紀要)」にオンライン掲載された。

ピロリ菌は胃がんや胃悪性リンパ腫の原因菌で、昨今では除菌治療に難渋する薬剤耐性ピロリ菌も問題となっている。

今回の研究でコレステノンは、ピロリ菌の除菌薬として使用されるクラリスロマイシンへの耐性株も含めたピロリ菌に対して、ピロリ菌の細胞壁成分である「コレステリルα-D-グルコピラノシド(CGL)」の生合成を阻害することで抗菌活性を示したという。

また、ピロリ菌を感染させたマウスにコレステノンを混餌投与することで、コレステノンの除菌効果も確認されたと研究チームでは説明している。

なお、研究チームは、コレステノンは安全な分子であり、従来の抗菌剤とは異なる作用機序で抗菌作用を示すことから、ピロリ菌に対する新たな抗菌薬となることが期待できるとしている。

  • 信州大学 医学部 分子病理学教室の中山淳 教授

    信州大学 医学部 分子病理学教室の中山淳 教授 (出所:信州大学)