東京都の小金井市、東京学芸大学(学芸大)、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)の3者は4月20日、小金井市の小中学校に導入された、1人1台のChromebook(クロームブック)およびクラウド型教育プラットフォーム「まなびポケット」などを活用し、児童生徒1人1人に最適化された学習、協働学習による学び合い、遠隔授業の実現など、全国でも先進的な教育モデルの構築を目指した「GIGAスクール構想による個別最適化された深い学び等の実現に関する連携協定」を締結した。
会見に出席した小金井市の西岡真一郎 市長は、「小金井市は2020年中に市内の小中学生8000名にPC(Chromebook)の配布を完了したほか、同年12月には大容量ネットワークの整備も完了。市民や教員に向けた小金井市GIGAスクール構想の説明会も行うなど、PCを活用した教育実践を進めてきた」と、これまでの同市の教育のデジタル化に向けた取り組みを説明。この間、NTTコミュニケーションズとは学校へのPC配備に伴う学内のインターネット環境整備やアプリケーションの整備を進めてきたほか、学芸大とは小金井市に同大のキャンパスがあることもあり、教員研修や授業研究などを協力して進めてきたとする。 また、西岡氏は「3者の連携により、PCを活用した学習環境が整備され、教育活動の研究が活性化し、幅が広がり、どんな時でも子供たちの深い学びを止めない環境が整った」とする一方、PCはあくまで学習ツールの1つであり、ツールとしての有効性を最大限に発揮できる小金井モデルを構築することで、日本の教育分野をリードしていきたいともする。
未来の学習の在り方の構築を目指す
今回の連携協定は、こうしたICTを活用した教育を行っていくための基盤が整備されたことを受けたもので、それを踏まえて教員のICT技能の向上や、授業設計の在り方の研究などが必要だと小金井市では判断。東京都小金井市教育委員会の大熊雅士 教育長は、「教員のICTスキルに差があり、学びの効率化や多様なかかわりに差が生じる。コンピュータに抵抗を持つ教員もいるので、差が出てくるのは理解できる。一方で、ICTを活用できる教員もいるが、ICTを活用する、ということに重点が置かれ、その結果、教科の狙いを十分に達成できない、という可能性がでてくる。もし、その状態で、そうした教育手法が広まれば、本来目指すべき教科の目指すところを達成できないことになる」と、背景を説明。それぞれの知見を有する2者と協力することで、NTTコミュニケーションズには、多様な学習コンテンツの提供ならびに教員に向けた研修や利活用のサポートの実施を、学芸大にはICTの活用を踏まえ、本来、その教科が狙っている成果を出せているかの評価などを行ってもらうことを目指しており、この2者間の間でも、教育の本来の姿と学術的効果の検証を進めていってもらうことで、よりよいコンテンツの創出を図っていきたいとしている。
そのため、今回の連携協定の基本コンセプトは「未来の教育の創造と発信」とし、コンピュータを活用することで、今までは黒板に向かって画一的な学習機会が、児童1人1人の、映像が効果的なのか、文字を読んだ方が効果的なのか、音で聞くのが効果的なのか、といった個別最適化を図っていくことにつながるほか、遠隔授業や遠隔交流による多様なつながりの構築などでの活用につなげていきたいとしている。
なお、今後3者は、2021年5月より小金井市立の全学校で実践を開始していき、7月よりこの連携の取り組みをNTTコミュニケーションズが取材する形で、誰でも視聴できる形でWeb上で情報発信を行っていく予定としているほか、2021年度末には、この取り組みの成果報告も行う予定としている。
また、日本の教員養成の中核大学として、多数の付属小中学校を有する学芸大では、今回の取り組みとは別に、2020年夏より、教員、企業と教育委員会がワンチームとなって、Society5.0に向けた新しい学校システム創りに挑戦していく「未来の学校みんなで創ろう。プロジェクト」を竹早地区で始動させており、そちらの成果を今回の3者での連携にも活用したり、またその逆を行ったりといったことも進め、未来の教員養成に向けていきたいとしており、同大の國分充 学長も「未来の教員養成という点でも大きな意味を持っていると思っている。この取り組みに大きく期待する」と期待を寄せている。