半導体エネルギー研究所(SEL)と米Silvaco(日本法人:シルバコ・ジャパン)はAI分野などさまざまな用途への適用が期待される酸化物半導体FETのSPICEモデルを共同で開発したことを発表した。

SELが開発した結晶性酸化物半導体CAAC-IGZO FET(c-axis aligned crystalline indium-gallium-zinc oxide FET)は低いオフリーク電流を有することから、低消費電力デバイスとしての活用が期待される。しかし、回路設計で必須のSPICEシミュレーション用のコンパクトモデルが存在していなかったという。

今回、両社が開発したCAAC-IGZO FET向けコンパクトモデルは、Multi-gate FinFETの業界標準モデルともいえるBSIM-CMGをベースにCAAC-IGZO FETの材料特性と動作モードを拡張したチャージベースのモデルであり、酸化物半導体FETの特徴を忠実に再現することが可能だとしている。

その特長としては、以下のものが挙げられるという。

  • 酸化物半導体固有の蓄積モードでの動作を表現
  • L/Wスケーラビリティと温度依存性を表現
  • Fin形状を持つマルチゲート構造に対応
  • ボトムゲートによる閾値電圧制御を表現
  • 界面およびサブギャップ局在準位を表現
  • 業界標準のVerilog-A言語で記述

なお、同コンパクトモデルの詳細については、4月8日から11日に中国成都にて開催されたIEEE Electron Devices Technology and Manufacturing Conference (EDTM) 2021にて発表されたという。