GoogleがサードパーティCookieといったトラッキング技術の代替技術として開発を進めている「FLoC (Federated Learning of Cohorts)」に関して批判が相次いでいる。この状況を理解するには、FLoCがどのような技術であり、何が議論の対象となっているのかを知る必要がある。
FLoCについて知るには、電子フロンティア財団(EFF: Electronic Frontier Foundation)が提供している次のページに掲載されている内容がわかりやすい。
電子フロンティア財団の説明から、FLoCが何者かを簡単にまとめると次のようになる。
- サードパーティCookieといった技術を使うことなく、広告主がユーザーターゲティングを実現することができる技術。
- ユーザーの過去1週間の閲覧履歴から、ユーザーを3万3,000以上あるグループのどれかに分類する。それぞれのグループのほとんどは数千人以上が存在している。
- 具体的には、過去の閲覧履歴からSimHashと呼ばれるアルゴリズムを使ってFLoC IDと呼ばれるIDを計算している。このIDがグループを示している。
- FLoC IDは1週間に1度再計算される。
- FLoC IDはChrome側で計算され、一旦サーバにデータが集められるといったことはない。
電子フロンティア財団はこうしたFLoCの特徴に対し、技術的なポイントに絞ってまとめると次のような内容を問題点として指摘している。
- FLoC IDのほどんどは数千人のユーザが存在しており、このIDからはユーザを特定することは難しいとされている。しかし、トラッカーはこのIDをユーザの絞り込みに使うことができ、ほかのトラッキング技術と組み合わせることでトラッキングを助長することにつながる。結局トラッキングを強化することにつながり、従来の懸念がより強固になる可能性がある。
Googleが広告業界に対してFLoCを使ったサービスの提供を正式に開始したとしても、トラッカーが他のトラッキング手段を捨てるという保証はない。現在でもすでにさまざまなトラッキングテクニックが存在しており、いたちごっこではあるが、主要Webブラウザベンダーはこうしたトラッキングを無効化するための技術開発に取り組み続けている。
それだけトラッキングの無効化は難しいという現状がある。GoogleがFLoCを推したとしても、トラッカーはFLoCをトラッキング方法のひとつと捉えるだけの可能性があり、状況が悪化する可能性が懸念されている。
電子フロンティア財団は、次のような言葉でFLoC を痛烈に非難している。
- Googleは、「FLoC (およびプライバシー・サンドボックスなどほかの要素)を使った世界は、データブローカーや広告業界大手が平然とトラッキングやプロファイリングを行う現在の世界よりもよいだろう」とプライバシー擁護派に訴えている。しかし、この枠組みはユーザーに対して「古いトラッキング」と「新しいトラッキング」のどちらかを選ばなければならないという誤った前提に基づいている。
電子フロンティア財団は、Webブラウザの開発者は広告業界の利益に合わせることなく、プライベートでユーザーフレンドリーな体験を提供することに注力すべきだと考えていると主張するとともに、FLoCの未来は受け入れられないといった旨を主張している。