TSMCが4月15日に開催した2021年第1四半期の業績発表会によると、同四半期の売上高をプロセス別に見ると5nmが14%、7nmが35%となり、最先端プロセスだけで売り上げのほぼ半分を占める規模になったという。

以降、14nmが14%、28nmが11%と続く(10nmや20nmは顧客メリットが乏しい模様でほとんど注文がなかったようだ)。ただし、四半期別の5nmプロセスならびに7nmプロセスの売上高を見ると、2021年第1四半期については、前四半期比で5nmプロセスの売り上げが落ち込んでいるが、これはApple iPhoneの2020年秋モデル向け製品の製造がひと段落したためとみられる。

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    TSMCの2021年第1四半期のプロセス別売上高推移 (出所:TSMC)

また、アプリケーション別に売り上げに対する成長率を見ると、前四半期比でスマートフォン向け同11%と落ちた一方で、HPC、IoT、自動車、データセンター(DCE)が2桁%の成長を達成している。中でも車載半導体の成長率は2020年第4四半期で前四半期比27%増、2021年第1四半期で同31%増と大きく伸びており、この結果、2020年第4四半期の売上高における車載半導体の比率は3%であったものが、4%へと増加している。

車載半導体不足により、各国政府や自動車メーカーが台湾政府およびTSMCに生産を要請しており、こうした伸びはそうした要請に応じた結果とみられる。しかし、ここで注目するべきはそれだけの売り上げの伸びに関わらず、全売上高に占める割合は3~4%に過ぎないという点だろう。車載半導体は低価格と高信頼性の両方が求められ、かつ1チップごとのトレーサビリティも求められるなど、ある意味厄介なデバイスであり、TSMCも積極的に製造してこなかったことが垣間見える。

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    TSMCの2021年第1四半期のアプリケーション別売上高比率 (出所:TSMC)

TSMCが日本に3D IC材料研究所を設置する狙いはどこにある?

なお、今回の業績発表会では、2021年第1四半期に取締役会が承認した事柄についての説明も行われ、公表資料の中にも、日本進出に関する承認事項が1項目含まれていた。

それによると、3D IC材料の研究拠点となる100%子会社を日本に設立するということだが、これは、すでに台湾内で行われている3 DIC素材の研究の拡大に向けたものである。TSMCが公式に発表しているのはこれだけであり、設立に際しては日本政府などからの援助は受けないものの、研究を行っていくための助成を受けるのか受けないのかについては語られていない。

日本の一部マスコミは、経済産業省がすでに補正予算で確保した資金をTSMCに提供すると伝えているが、TSMCの公式文書では、そうした事実は明らかにされていない。また、後工程のアッセンブリやパッケージングの研究を行うように伝えているメディアなどもあるが、3D ICは、むしろ前工程のクリーンルームを使ったBEOL(多層配線工程)の応用技術である点に注意する必要がある。

すでに、日本の主要な3D IC素材メーカーは台湾に進出してTSMCと協業を進めているため、TSMCが日本に進出する真の狙いは少なくとも筆者にははっきりとは思い浮かばない。ただし、TSMCは2021年に全世界から9000人もの技術者を採用する計画としており、日本への進出も、そうした人材リクルートや技術情報収集が目的ではないかと見られる。