新型コロナウイルス感染症の影響で、医療現場ではこれまで以上に迅速かつ正確な対応が求められています。行政との連携、感染者情報の管理、そして給付金の関連書類対応など、感染者のケアや病床の確保以外にも業務が増え続けています。

医療現場におけるITの役割は、医師や医療従事者の業務処理の時間を大幅に削減することで、患者ケアの時間を増やすことです。そのために必要なことは、データ、アプリケーション、およびデスクトップをどのネットワーク経由でもオンデマンドで提供し、セキュリティ、コンプライアンス、およびコントロールを維持することを可能にする、医療現場のクラウド化です。

医療現場で求められるIT環境とは?

患者ケアの改善方法として、さまざまなITソリューションが登場している中、どこからでも患者データへ瞬時にアクセスできることは重要です。しかし医療業界には独特の環境が存在します。

例えば、医療現場には多くの機器があり、病院の規模が大きな場合、医師はさまざまなワークステーションを使用します。回診時にタブレットを使用する場合もあるかもしれません。いつでも、どのシステムからでも臨床システムや重要な患者データにアクセスすることが求められます。

そして、一貫したデータ保護、プライバシーの確保、および情報の使用と患者ケアの品質確保に関わる規制へのコンプライアンスが必要です。結果的に、IT担当部署への要求も高くなります。しかし、離れた場所にいる患者の容体の管理などを求められるコロナ禍こそ、クラウド化の必要性を感じているのではないでしょうか?

以下、医療現場のクラウド化のために必要な3つのポイントを説明します。

ポイント1: 戦略的にパートナーを選ぶ

医療分野におけるテクノロジー戦略を提議するにあたっては、医療現場のクラウド化に関する実績を持つソフトウェアベンダーを選ぶことが極めて重要です。

医療現場でのクラウド化を実現するには、デスクトップとアプリケーションの仮想化、ファイル共有、クラウドコンピューティングとクラウドネットワーキング、モビリティマネジメントなど数多くの性能が必要とされます。そして、テクノロジーはITのコントロールとセキュリティに影響を及ぼすものであってはなりません。

ポイント2:医療現場に適切なソリューションを選ぶ

医療現場のクラウド化のベストプラクティスは、以下の3点です。

  • データとアプリケーションにおいて一貫したアベイラビリティが得られること
  • 安全かつ使いやすい環境であること
  • ユーザーへの負担を最小限にとどめるため、一貫しており、使い慣れた、信頼性の高いユーザーエクスペリエンスがどの機器においても得られること

例えば、アプリケーションとデスクトップの仮想化、クラウドコンピューティング、またはその両方の導入で、電子カルテ(EHR)、医療画像アプリケーション、以前から使用している臨床アプリケーションが同時に利用できるようになります。これにより、IT部門は集中管理が可能になるだけでなく、シームレスかつ瞬時に臨床ツールへアクセスできるようになり、同時にセキュリティを高めることができます。

また、ネットワークとパフォーマンスをリアルタイムで最適化することによって、高品質なエクスペリエンスを提供し、拡張性と機敏性のある環境を構築できます。

医師やその他のユーザーが複数のストレージに保存されたアプリケーションとデータに安全にアクセスでき、どの機器においても同一のインターフェイスを提供するなど、人間を中心としたアプローチを採用することで、ユーザーの生産性に加えて満足度も高めることができます。

ポイント3:安全で使いやすいクラウド環境を実現するテクノロジーを選ぶ

現場でテクノロジーを利用する医療従事者によっては、Windowsアプリケーションでは提供していない機能を必要とする場合もあります。このようなユーザーは病院や組織から提供されるアプリケーションだけでなく、その他のアプリケーションの利用を求めます。また、個人所有の機器を使用せざるを得ないユーザーも存在します。仕事のためのアプリケーションと、個人使用のアプリケーションを同じデバイス上で共存させたいユーザーもいます。

よって、モビリティマネジメント関連のポリシー、テクノロジー、およびセキュリティ戦略は、これらすべてへの対応を求められます。その場合、提供するアプリケーションとデータを個人のコンテンツから分離し、エンド・ツー・エンドのコントロールと保護を提供するテクノロジーを選択する必要があります。

クラウドを活用することで、医師が重要なデータにシームレスかつ迅速にアクセスできるようになれば、患者と接する時間を増やすことができます。IT部門が計画および適切なテクノロジーの選択を行うことにより、迅速な導入、複雑さの解消、さらには大きなコスト削減も可能です。

コロナ禍の影響で、医療従事者には多くの負担がかかっています。クラウド化、IoT化など、医療現場のデジタルトランスフォメーションで、その負担を少しでも減らすことが医療従事者の働く環境を改善し、よりよい医療の提供につながると信じています。

著者プロフィール

國分俊宏 (こくぶん としひろ)

シトリックス・システムズ・ジャパン 株式会社 セールス・エンジニアリング統括本部 エンタープライズSE部 本部長

グループウェアからデジタルワークスペースまで、一貫して働く「人」を支えるソリューションの導入をプリセースルとして支援している。現在は、ハイタッチビジネスのSE部 部長として、パフォーマンスを最大化できる働き方、ワークライフバランスを支援する最新技術を日本市場に浸透すべく奮闘中。