瞬く間に広がった新型コロナは、世界各地で禍を巻き起こし、現在でもなお大きな課題として立ちふさがっている。世界各国の各業界がこの課題解決のために試行錯誤を繰り返しながら、技術の歩みを進めている。流通・小売業界でもデジタルトランスフォーメーション(DX)は着実に前進しているが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、店舗においても非接触で商品購入や決済業務ができるITソリューションの導入が注目され、小売店のDX化が進んでいる。コンビニや店舗で使用する機会に触れた人も多いだろう。
NECグループでは今月に入ってからも同社が提供する決済手段のプラットフォームにおける、自動機向けに非接触ICクレジット決済への対応や地方創生に向けた業界横断のQRコード決済のためのサービスなどキャッシュレス化を推進するソリューションを発表している。先月開催された小売業界向けの展示会「リテールテックJAPAN 2021」においても同社は"非対面・非接触"を重視したソリューションを展示していた。ハード、ソフトを含めたトータルソリューション開発に力を入れてる展示品はどのようなものだろうか?レポートしてみよう。
NECは、今回グループとしてイベントに参加、"生活者がうれしい気の利いた買い物体験"、"働く人に寄り添った業務アシスト"、"信頼し安心していられるリテール環境"の三つをテーマに複数のソリューションを展示していた。
第一のテーマ「生活者がうれしい気の利いた買い物体験」のエリアで同社が特に力を入れていたのがセルフスキャンショッピングだ。専用アプリケーションを活用して自身のスマートフォンで、商品のバーコードスキャンと決済を行うというものだ。ユーザーは、来店して専用アプリを起動し、店舗に設置されているQRコードで入店チェックを行う。商品のバーコードをカメラで撮影し、アプリの買い物カゴにデータを登録、支払いを現金かクレジットで指定する。決済もそのままアプリで行うことで「非対面・非接触」なセルフショッピングになる。酒類などの年齢確認、特売商品の処理などにも対応している。
第二のテーマは"働く人に寄り添った業務アシスト"では「画面に触らずに操作できるセルフレジ」システムが展示されていた。端末に設置された赤外線センサーが指を認識し、実際の画面に触れることなく、パネルを操作できる。商品のバーコードスキャンや支払いもタッチパネルを触れることなく処理する。コロナ禍における従業員の負担軽減と、店員と購入客双方の非接触・非対面を実現するもので、すでにコロナ禍での厳しい感染対応が必要とされている病院の受付で導入されているそうだ。
最後のテーマ"信頼し安心していられるリテール環境"においては、開発中の「マルチモーダル認証によるタッチレス決済システム」が参考展示されていた。マルチモーダル認証とは、NECの顔認証システムと人間の網膜を活用した虹彩認証の二つの生体認証を活用し、正確かつ早い認証を実現するシステム。同社では、これに加えて、赤外線センサーによる視線推定技術によるタッチレスシステムも展示していた。目線を動かすことで端末に触れることなく、認証データの登録を行うことができる。また、このシステムにより、従来の課題であった顔認証における本人の意思確認もシステムを活用して行うことができるようになる。同社担当者によると社内ビルのコンビニにおいて実証実験を行っており、それらのデータを元に数年後の実用化を目指しているそうだ。
それ以外にも同社では、荷物を計測台に置くだけで、瞬時にサイズを計測する「荷物サイズ計測・データ化ソリューション」やAIの画像認識技術を活用した会計システム「商品認識ユニット」、AIを活用した店舗の客数、及び日配品販売数の適正な需要を予測する「AI需要予測」など、リテール部門で必要とされ興味深いソリューションが展示されており、人気を博していた。
コンビニや店舗など身近なところで体験することも増えてきた新しい技術だが、展示会では初めて目にする技術やソリューションなども多い。普及が進めば、コロナ禍での経済活動から地方創生まで、広く貢献してくれそうな技術たちだと期待を抱けるものであった。