東京大学医科学研究所は、米国カリフォルニア州で見つかっている新型コロナウイルスの変異株(B.1.427およびB.1.429)が日本人の免疫から逃避する可能性を明らかにした。

同成果は、東京大学医科学研究所 附属感染症国際研究センター システムウイルス学分野の佐藤佳 准教授の研究室が主催する新型コロナ研究コンソーシアム「The G2P-Japan」によるもので、佐藤准教授のほか、ヒトレトロウイルス学共同研究センター(熊本大学/鹿児島大学)の本園千尋 講師、同 上野貴将 教授、東京大学医科学研究所 附属感染症国際研究センター システムウイルス学分野の木村出海 博士課程3年、同・瓜生慧也 博士課程2年、東海大学医学部 基礎医学系分子生命科学の中川草 講師らが参加している。詳細は、生物学のプレプリントリポジトリ「bioRχiv」にて公開された。

それによると、同コンソーシアムでは新型コロナのスパイクタンパク質の一部が、CTLやマクロファージが直接細胞を攻撃する免疫反応である細胞性免疫のうち、日本人の6割が持つとされる白血球の型「HLA-A24」によって強く認識ことを免疫学実験によって実証したほか、B.1.427系統ではY453F、B.1.429系統ではL452Rというスパイクタンパク質のアミノ酸変異があり、これらの変異はいずれもHLA-A24による細胞性免疫から逃避、つまり免疫細胞の働きを抑制するなど、免疫の効果を弱めることを実証したという。

さらに、これらの変異が、新型コロナウイルスの感染と複製効率に与える影響を、ウイルス学実験で検討した結果、L452R変異は、ウイルスの感染力を増強させることも判明したという。

今回の結果を受けてコンソーシアムでは、L452R変異は、日本人に多いHLA-A24による免疫から逃避するだけでなく、ウイルスの感染力を増強しうる変異であることから、日本人あるいは日本社会にとって、他の変異株よりも危険な変異株である可能性が示唆されるとしており、この変異株へのリスク対応のためにも、流行株のサーベイランスや空港での水際対策の強化の必要性が考えられるとしている。