東証の適時開示情報を基に経営権の異動を伴うM&A案件(グループ内再編を除く)について、ストライク(M&A Online)が集計したところ、IT・ソフトウエア業界の2021年3月のM&A発表件数は22件で、3月としては2012年以降の10年間では、2015年(15件)を上回り過去最高を更新した。
取引金額は約1兆796億円で、こちらも3月としては2012年以降の10年間では2016年(約3234億円)を上回り、過去最高を更新した。
事業強化の動きに伴い件数が増加傾向にあるのに加え、1兆円を超える大型の案件があったため、件数、金額ともに大きく伸びた。
取引金額のトップは日立製作所の1兆円超
取引金額のトップは日立製作所が米国のIT企業グローバルロジック(カリフォルニア州)を買収すると発表した案件で、買収金額はグローバルロジックの有利子負債を含めた約96億ドル(約1兆422億円)に達する。
日立の企業買収としては過去最大で、同社ではITやエネルギー、鉄道、モビリティー(移動手段)、ヘルスケアなどの先進的な社会インフラのDX(デジタルトランスフォーメーション)を世界規模で加速する。買収は2021年7月末までに完了する予定。
グローバルロジックはデジタルエンジニアリングサービス市場のリーディングカンパニーと目され、世界14カ国に約2万人の従業員を抱える。
取引金額の2番目はイグニスが、MBO(経営陣による買収)による株式の非公開化を目的に、米大手投資ファンドのベインキャピタルと組んでTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した案件で、買付代金はおよそ263億円。
イグニスが主力とするスマホ向けアプリ開発・運営を巡る競争環境は目まぐるしく変化する市場特性があり、非公開化で機動的・柔軟な意思決定を可能にする。
TOBの実施主体であるi3(東京都千代田区)はイグニスの銭錕社長、鈴木貴明取締役CTO(最高技術責任者)が各25%、ベインキャピタル傘下企業が50%を出資して設立した。
金額の3番目はNFCホールディングスが、比較サイト運営子会社のウェブクルー(東京都世田谷区)の全株式を、同社社長の藤島義琢氏が設立したFW(東京都世田谷区)に譲渡することを決めた案件で、譲渡価額は35億円。
NFCホールディングスはコールセンターや訪問販売、実店舗、Webなど多様なチャンネルで保険商品を販売している。一方、子会社のウェブクルーは保険、引っ越し、自動車、シニア、教育などの比較サイトを運営している。
このほか3月は20億円台が1件、10億円台が2件、10億円未満が5件あり、金額非公表などが11件あった。