65歳以上の高齢者を対象とした新型コロナウイルスワクチンの接種が12日、全国で始まった。医療従事者に続く接種で一般国民への接種は初めて。前例のない大規模集団接種が本格化する。政府は同日、「まん延防止等重点措置」適用の対象を大阪府などに続いて東京都など6都府県に拡大した。ワクチン接種は欧米と比べて大幅に遅れている。今後はワクチンの普及と、感染爆発などさらなる感染の拡大阻止との両立が課題となる。

高齢者は感染すると重症化リスクが高いため、政府は医療従事者に次いで優先接種の対象とした。65歳以上の人は全人口の3割近くに当たる約3600万人。米ファイザー製のワクチンが使われ、原則3週間の間隔で2回接種する。ワクチンは都道府県単位で配布され、市町村への配布優先順位は各都道府県に任されている。

  • alt

    高齢者に接種される米ファイザー製のワクチン(米ファイザー提供)

厚生労働省関係者によると、12日の接種開始日に確保できたワクチン量は約5万人分とみられ、確保、供給量が増えて接種が本格化するのは5月ごろになる見通し。政府は6月末までに高齢者人数を上回る量を確保できるとしている。

厚労省などによると、先行して2月17日に始まった医療従事者への接種で、2回目接種が終わったのは500万人近い対象者の10%程度にとどまっているという。これまでに1回でも接種を受けた医療従事者数で見ても全人口の1%未満。世界平均の5%程度、欧米諸国の数十%に比べると日本の接種率は際立って低い水準になっている。

12日に始まった高齢者への接種は、残りの医療従事者への接種と同時に進めることになる。政府は高齢者に続いて64歳以下で基礎疾患のある人や高齢者施設従事者などに順次接種を進める方針だが、ワクチンの確保、供給量は確定しておらず、詳しいスケジュールは未定だ。

政府は高齢者への接種が始まった同じ12日、大阪、兵庫、宮城の3府県に続いて東京、京都、沖縄の3都府県にも「まん延防止等重点措置」を適用、合わせて6都府県に拡大した。

同措置は緊急事態宣言に準じた感染対策が可能になり、2月に施行された新型コロナウイルス対応の改正特別措置法に新設された。首相が都道府県単位で対象地域と期間を定めるが、市区町村単位に範囲を絞ることもできる。指定地域の知事は、飲食店への営業時間短縮などを命令する権限を持つ。

措置を適用された地域では感染力が高いとされる変異株が広がって感染の「第4波」に入っている。医療体制の逼迫(ひっぱく)度を示す病床の使用率も4月5日の週は40以上の都道府県で前週より増加した。病床がほとんど埋まっている地域もあり、医療現場や保健行政を担う自治体関係者は危機感を募らせている。

  • alt

    国立感染症研究所で分離された新型コロナウイルスの変異株「VOC-202012/01」の電子顕微鏡画像(国立感染症研究所提供)

関連記事

新型コロナのワクチンの国内初承認へ審議 ファイザー製品で厚労省部会

新型コロナ回復者の98%が半年後も抗体保持 ワクチン効果を期待させる横浜市大調査