会津産業ネットワークフォーラム、アクセンチュア、SAPジャパンは4月9日、共通業務システムプラットフォーム「コネクテッド マニファクチャリング エンタープライゼス(CMEs)」を構築し、提供を開始したと発表した。
CMEsは、ANFの会員である福島県会津地域の中小製造企業を皮切りに本格導入の検討が進められるほか、全国の中小製造業企業にも順次拡大される。
大企業に比べて、中小製造企業ではデジタル化が遅れている背景を踏まえ、経済産業省、中小企業庁、会津若松市、会津大学などの官学の支援の下、ANF、アクセンチュア、SAPジャパンが協力し、中小企業各社が低コスト、高品質で共通の業務システムを利用できるように、共通業務システムプラットフォームであるCMEsを構築し、提供することにしたという。
アクセンチュアは東日本大震災が発生した2011年から、会津若松市と会津大学で連携協定を締結し、将来に向けた、持続可能な街づくりを目指し、デジタルプラットフォームの整備や「スマートシティAiCT」のオープンなど、さまざまなプロジェクトを推進してきた。
アクセンチュア 代表取締役社長 江川昌史氏は、「われわれは会津の復興に向けて地域再生に取り組み、会津大と共同で雇用を 増やすなどしてきた。今は、ポストコロナの社会を見据え、東京の受け皿として、会津地域をどう育てていくかを考えている」と語った。
江川氏は、地方が抱える課題の1つに、ITが活用できていないことがあるが、地方の企業が単独で導入・運用するのは難しいため、市民を中心としたオープン/フラットなプラットフォームを構築し、これにより、継続的にエコシステムとつながり、コラボレーション/シェアを可能にすることで、実現していくと説明した。
会津若松でのプロジェクトを率いるアクセンチュア イノベーションセンター福島 共同統括 中村彰二朗氏は、「スマートシティはスーパーシティに向けた通り道であり、地方の生産性を上げることが第一」と述べた。
また、中村氏は「中小企業が個別でIT化を進めるには、コストと運用体制の面で無理があった。そこで、シェアリング化によって、この課題を解決することに行き着いた。ただし、シェアリングを実現するには経営者のマインドセットのチェンジが大事。今回のプロジェクトでも気持ちのハードルがあったが、乗り越えてきた」と語った。
同プロジェクトでは大きく4つのステージに分けて段階的に「コネクテッド・インダストリーズ」の実現を目指し、大きくは、個社における業務連携・高度化を実現する段階と、企業間連携によりさらなる価値を創出する段階に分かれる。第1ステージに位置づける非競争領域のICT基盤導入により、約25%の生産性向上が実現可能だという。
プラットフォームは、ERPシステムを中心に、 MESやサプライヤーポータルとも連携して業務の循環を高度化していく。第1弾としては、「SAP S/4」とサプライヤーポータルが提供される。中村氏は、「プラットフォーム導入にあたってのポイントは、カスタマイズしないこと。アクセンチュアは、業務プロセスとシステム設定を業界標準テンプレートとして持っているが、それを中小企業向けにブラッシュアップし、それを活用した」と説明した。
SAPジャパン代表取締役会長 内田士郎氏は、「SAPは2019年に会津若松に拠点を構えた。それ以来、ものづくり、教育、イノベーションに取り組んできたが、今回の取り組みはものづくりに当たる。世界に比べて、日本の生産性は低いと言われているが、業務共通プラットフォームによって、生産性を上げていきたい」と述べた。
ANFの会員企業であるマツモトプレシジョンがCMEsを導入し、活用を開始している。同社の代表取締役社長 松本敏忠氏は、「もともと、自社でERPを用意するつもりだったが、ANFの会合に参加しているうちに、それでは部分最適ではないことに気付いた。業務共通プラットフォームを利用すれば、全体最適が可能になり、またサブスクリプションモデルで提供されているため、無理なく利用できる点がよかった」と語っていた。