コロナ禍で変化が生じたオンライン販売の在り方
2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は瞬く間に世界中に拡散され、社会の在り方そのものを大きく変化させることとなった。それは半導体業界をはじめとするエレクトロニクス業界も同様である。そうした業界の変化の1つに、オンラインでの部品購入の増加がある。
そこで注目されるのが、オンライン半導体商社の存在である。今回、同社の代表取締役である戸澤正紀氏に、コロナ禍において、どのようにエレクトロニクス業界の部品調達に変化が生じたのか、そして同社はそれを受けて、どういう方向に向かうのか、といった現在のオンライン半導体商社を取り巻く現状、を聞いた。
同社の設立は2000年12月。以降、100%独立系オンライン半導体商社として20年以上にわたって事業を継続してきた。現在は、国内拠点のみならず、香港、米国、中国、ドイツ、タイにもオフィスを構えるグローバル企業となっているという。
そんな同社の特徴はインサイドセールスの数がアウトサイドセールスの数の倍ほどいるという点と、Webシステムや基幹システムといったIT関連システムを自社で構築しているという点。戸澤氏は、「デジタルとは何か。それは情報を取れること。それを何に活用するか、それが宝になる。情報戦略とマーケティングは社長直下に置くほどの重要部隊」と、自社の陣容を説明する。
また、新型コロナと直接関係があるわけではないが、製造業全体として、「余剰在庫の増加」、「生産中止品の増加」、「地政学的リスクやサプライチェーンの問題による入手困難な製品の増加」といった傾向が最近強まっているという。
「こうした課題を解決することがコアスタッフの存在意義」(戸澤氏)とのことで、一般的な半導体や電子部品メーカーの代理店として販売を行う「CoreStaff ONLINE」でも、半導体メーカーなどから同社の物流倉庫(長野県佐久市)に在庫を送ってもらって、それを委託販売という形で販売したり、コアスタッフがメーカー指定の最低発注数量で在庫を購入し、1つから顧客に販売する「ひとつから」といったサービスを提供したりと、購入者の目線に立ったサービスの拡充を進めている。
「委託販売の売りは、メーカーからは管理費をもらっていないという点。メーカーから見れば、無償の販売機能が付いた外部倉庫として見てもらえるので、在庫を確保しやすい」という。
また、マウザーエレクトロニクスとパートナーシップを締結しており、コアスタッフからもマウザージャパンの価格と同じ価格で購入できるほか、生産中止品(EOL)のスペシャリストであるロチェスターエレクトロニクスとも提携している点も強みで、海外拠点が構築した独自ネットワークによるEOL品調達と併せて、普通の代理店では扱いづらいEOL品の提供にも柔軟に対応できる点なども同社の特徴だという。
さらに、特徴的なのが、物流センターのある佐久市に解析センターを有していること。半導体などの品質検査を行うセンターだが、主に半導体の真贋判定が行われているという。というのも、「EOL品の偽造品は意外と多い」とのことで、そのため、さまざまな計測機器を活用して真贋判定を行い、正規品であるという保証を付けて販売しているという。「偽造品については、だいたい販売する前に止めることができる。ここまでできているところはあまりないと思っている」と、その特徴を強調する。
半導体不足にどう立ち向かうのか
2021年は初頭より自動車向け半導体が不足しているという話題が業界を飛び越え、社会的に注目を集めるようになった。2021年4月頭の時点では、車載半導体のみならず、民生機器などの半導体も不足気味であるという話がでている。
こうした状況の中、オンライン半導体商社としてどういった取り組みを進めていくのか。戸澤氏は「我々の考え方としては、半導体、電子部品のカタログをデジタルとアナログのハイブリッドで持っているが、そこだけでは厳しいと思っている。そこでポイントとなるのが付加価値だが、それも変化のスピードが早く、すぐに陳腐化してしまうので、現在進行形で常に追求していくというスタンスを取る」と、目新しさも重要としつつ、同じサイクルを愚直に回して利用者数の増加も図っていくことを強調する。
もう1つ、戸澤氏が強調するのが事業領域の拡張である。これまでは半導体や電子部品が中心であったが、新たに工具などを扱うメーカーとパートナーシップを締結したことで、工具や電線など、電子機器などを作るうえで必要となる周辺製品も販売できるようになったという。また、国境を超えていくことも考えており、中国にも物流センターを設置することなどを計画しているという。
さらに、顧客が部品を調達困難になっても、生産維持に必要な数量を確保できるバッファ機能も自社で担うことを考えているとするほか、EOL品のラストバイを顧客に代わって行う「EOLバンク」のサービスもスタートさせるとしており、こうした取り組みに伴って、佐久市に現状の物流センターに比べて10倍近い広さのものを新たに建設、2022年度には開設したいとする。
戸澤氏は、エコシステムの構築を進め、半導体商社同士でアライアンスを組んで、自社の持つデータをパートナーに公開するなど、情報共有を進めることで、各社の力を集結させていき、それぞれが強みを持つところで成長を図っていきたいと語る。そのため、今後の方向性については、「残念ながら、一足飛びの近道はない。売れるには売れるなりの理由がある。その正当な理由をどう見つけていくか」と、地道な取り組みの継続こそが最大の成長への近道だとし、コアスタッフを多くの人が1つの半導体や電子部品を入手するための機能として活用してもらえるようにしていきたいとしている。