携帯市場はこのほど、電気通信大学 i-パワードエネルギー・システム研究センター 横川研究室(横川 慎二教授)との産学連携プロジェクト「スマホバッテリー劣化研究プロジェクト」による、モバイル端末のバッテリー劣化に関する研究結果を発表した。
同プロジェクトは2020年7月、2050年の社会に向けてバッテリーの果たす役割と重要性はより大きくなると言われている中、スマートフォンなどの情報端末におけるバッテリーの劣化はユーザーの使い方に大きく影響をうけることを前提に、情報端末の使い方に基づいてバッテリー劣化の傾向を調査・研究する目的で立ち上げられた。
同調査・研究に先駆けて、電気通信大学 大学院情報理工学研究科 情報学専攻 石垣陽特任准教授監修の下、年間10万台規模で中古携帯電話(フィーチャーフォン・スマートフォン)・タブレットを取り扱う携帯市場の2020年度のバッテリー劣化の割合(フィーチャーフォン全体の7割、スマートフォン、タブレットはそれぞれ全体の2割)と昨今の価格の評価下落率(平均10%)を自宅に退蔵されたとされる携帯端末の市場価値総額1兆2,936億円(MM総研2017年発表)に掛け合わせたところ、バッテリー劣化による経済損失額は推定4,220億円相当になったという。
同プロジェクトが行ったアンケート調査によると、若年層からシニアの幅広い世代まで、スマートフォンを使って動画視聴やゲームを充電アダプタにつなぎいだ状態で行う「ながら充電」が、バッテリー劣化の進行を早めるという結果が明らかになった。
高齢層は、動画を見る人の半数以上が、ゲームをする人の半分程度が、また、若年層は大半の人が動画・ゲームをしながら「ながら充電」をしていることがわかっている。横川教授は、「今後はオンライン会議で“ながら充電”することが、バッテリーの劣化を招く原因のひとつとなりそう」と指摘している。
また、今までのユーザー調査をもとに、実際に「ながら充電」をしながらゲームをした場合と、ゲームはしないで充電のみを行った場合で温度差の比較を行ったところ、ある程度時間を経過すると発熱が大きく変わる傾向がうかがえたという。発熱による温度差は8.9度になり、高温ほどバッテリー劣化の進行が加速されるという性質によって、端末へ悪影響が及ぶことが懸念されるという。