日本国内や海外の旅行ガイドブックという印象の強い「るるぶ」が「なぜ、宇宙のガイドブックを?」「どんな内容なの?」と興味を持たれる方も多いことだろう。今回は、この詳速レビューということで「るるぶ宇宙」を紹介したい。

JTBパブリッシングから、「るるぶ宇宙」が2021年3月31日に発売された。販売価格は1100円。全国の書店などで販売されている。 日本国内や海外の旅行ガイドブックという印象の強い「るるぶ」が「なぜ、宇宙のガイドブックを?」「どんな内容なの?」と興味を持たれる方も多いことだろう。今回は、この詳速レビューということで「るるぶ宇宙」を紹介したい。

「るるぶ」といえば、日本国内そして世界の旅行ガイドブックとして有名なことはご存知だろう。昨今の新型コロナウィルスの感染拡大で思うように旅行ができない、そんな悩みを多くのかたが抱いているのも事実だ。そんな声に応えるべく、「家でも楽しめる旅行先」の新しいエリアとして、るるぶは「宇宙」を選んだのだ。

もちろん、昨今のヒトと宇宙に関するニュースが多いのも企画に至った理由の一つだ。SpaceXの宇宙船Crew Dragonによる民間企業初となる「国際宇宙ステーション(ISS)」への宇宙飛行士輸送のニュース、次いで日本の野口宇宙飛行士のCrew Dragonの搭乗、そして今年4月に予定されている星出宇宙飛行士のCrew Dragonの搭乗と、ヒトと宇宙が関わったニュースが多いのも近年の特徴だ。

これまでは、NASA(米国航空宇宙局)やJAXA(宇宙航空研究開発機構)などから選抜された宇宙飛行士が宇宙へ行く時代であったし、現在もそうである。実際に、民間人で宇宙へと行ったのは、2001年4月、世界初の宇宙旅行者となったデニス・チトー氏をはじめ数名しか存在しない。そして富裕層が多いのも否定できない。

このようにまだまだ、民間の宇宙旅行者というのは、少ないのが実情だ。しかし、これからの近い将来、一般の人の多くが宇宙へと旅行ができる時代がきっと来るのだ。Virgin GalacticやPD エアロスペースなどが世界各国のベンチャーが準備を進めている。そんな期待を持っている方は、ぜひ、本誌を手にとって心の準備をしてほしい。

  • 2021年3月30日に発売された「るるぶ宇宙」の表紙

    2021年3月30日に発売された「るるぶ宇宙」の表紙

本誌を手に取ると、表紙には、青い地球を背景に船外宇宙服の宇宙飛行士とISSが目に入ってくる、宇宙に興味をもった人であれば興味を惹くビジュアルだ。この辺りは、ビジュアルを得意とする「るるぶ」らしさがみえる。そして表紙をめくると宇宙旅行の内容が満載。では、早速、本題に入っていこう!

国際宇宙ステーションを知れば、未来の宇宙ホテルが想像できる⁉

本誌では、ISSの大特集が設けられている。ISSとは、地上から約400km上空の宇宙を周回しており、宇宙飛行士が様々なミッションを行う実験施設だ。

この特集内容は、正直、かなり詳しい。

JAXAのホームページや他の書籍などでISSについての情報を得ることはできるが、これだけビジュアルを駆使し、わかりやすく体系的にまとめているのが、「るるぶ」の特徴だろう。

特に知ってほしいのは、宇宙飛行士の生活の様子だ。例えば、トイレ、お風呂、歯磨き、食事、睡眠、掃除など。あまり詳細をお伝えするとネタバレになるので、この辺りで抑えておくが、筆者は、この生活の様子を、ぜひ知ってほしいと考えている。

その理由は、未来の宇宙ホテルでの生活をイメージできるからだ。実は、このISS での宇宙飛行士での生活と, 近い未来の宇宙ホテルでの生活と大きくは変わらないだろうと考えている。ぜひ予行演習にどうだろう。

  • 「るるぶ宇宙」で紹介されている 国際宇宙ステーションの大特集「 ISSで暮らす

    「るるぶ宇宙」で紹介されている 国際宇宙ステーションの大特集「 ISSで暮らす」(出典:JTBパブリッシング「るるぶ宇宙」)

他にも、宇宙飛行士に関するQ&Aのページもある。宇宙飛行士にはどうしたらなれるのか、どんな試験なのか、どんな訓練をやるのかなどが紹介されている。

2020年10月にJAXAが新たに宇宙飛行士の募集を開始するというニュースは大きく報じられ※1、募集・選抜・基礎訓練に関する情報提供依頼(RFI)や※2、意見募集(パブリックコメント)※3も行い、2021年秋ごろの募集開始に向け本格始動している状況だ。

これを機に宇宙飛行士にチャレンジしようとする方も多いのではないだろうか? 筆者の周りでも何人かチャレンジするようだ。このあたりの情報も宇宙飛行士になるための情報に役立ちそうだ。

未来の宇宙旅行はどうなる?! 人類が目指すのは月か火星か??

本誌では、近い将来に皆さんが行くであろう宇宙旅行についてフォーカスし、なかでも、月周回旅行、サブオービタル旅行をメインに紹介している。

月周回旅行の計画を進めているSpace X※4を、サブオービタル旅行のBlue Origin※5、PDエアロスペース※6、Virgin Galactic※7を取り上げて、具体的にどのような宇宙船に搭乗して、どのように宇宙へ行き、どれくらいの時間を宇宙で過ごすのかなどが詳しく解説されている。ここを読むと宇宙旅行という漠然としたイメージがより具体的になるだろう。具体的になれば、本誌を見て、「どの宇宙旅行企業を選ぼうか?」、なんて想像を膨らませるのも楽しいかもしれない。

  • 「るるぶ宇宙」で紹介されている「宇宙旅行最前線」

    「るるぶ宇宙」で紹介されている「宇宙旅行最前線」(出典:JTBパブリッシング「るるぶ宇宙」)

紹介されているのは月周回旅行、サブオービタル旅行だけじゃない。成層圏まで気球で上昇するという成層圏旅行も紹介されている。成層圏はもちろん宇宙ではないが、宇宙から見るような綺麗な青い地球や漆黒の宇宙も見れる宇宙旅行に分類してもいい旅行だ。

そして、月や火星についても注力している掲載しているのが印象的だ。人類が月を目指した歴史から、アポロ計画以来の大プロジェクトで、再び人類が月を目指すアルテミス計画などについてもビジュアルでわかりやすく解説してある。火星については、先日歴史的な大ニュースとなった火星探査機パーサヴィアランスについても触れている。今まさにホットな宇宙のニュースにも触れることができる。

家族でプチ旅行するならココ! 日本の宇宙スポット紹介!

昨今の新型コロナウィルス感染症の感染拡大で思うように旅行ができないけど、しっかりと感染拡大予防の対策をした上で、国内であれば……という方に向けてプチ旅行も提案されている。それが、日本の宇宙スポットである日本全国の宇宙施設だ。

本誌を見ると、「日本にこんなに多くの宇宙施設があったのか」と正直、驚くことだろう。全国津々浦々の宇宙施設が紹介されていて、「こんなに自宅の近くにあるのは知らなかった……」などという新しい発見もあるかもしれない。本誌では、科学館、天文台、プラネタリウムの種別や体験型展示、ワークショップ、ガイドツアーのサービス別にも整理されていてわかりやすい。

ロケット、人工衛星や国際宇宙ステーションの施設の模型を見ることができるのはよくあると思うが、月の重力の模擬体験、宇宙飛行士の訓練模擬体験なども体験できる宇宙施設も全国にはあるのだ。

元JAXA出身である筆者が、皆さんに一度は訪れてほしいのは、やはり、JAXAの筑波宇宙センター※8だろう(元JAXAの職員だからオススメしているわけではない)。もちろん本誌でも紹介されていて、ロケット、人工衛星も宇宙開発、宇宙技術について知ることができる。宇宙飛行士養成エリアなどの有料ガイドツアーもあるのだ。お土産だってついつい友人などに配りたくなってしまうグッズもたくさんある。

もし様々な状況が許せば、JAXA種子島宇宙センター※9もオススメだ。来場していただければ、世界イチ美しい射場と言われている理由も実感できる。しっかりと感染拡大予防対策と宇宙施設に営業時間や入場制限や予約の必要性の有無などを事前に確認してから来場するのが良いだろう。

他にも、2020年12月6日に地球帰還しリュウグウサンプルリターンに成功したはやぶさ2※10、太陽系惑星、日本の宇宙ベンチャー、宇宙関連の漫画や書籍などについてもビジュアルでわかりやすく解説されている。網羅的に紹介しきれない部分もあることをご了承いただきたいが、宇宙旅行だけでなく宇宙を知ることができる親しみやすい1冊となっている。ぜひ手に取っていただきたい。

参考文献

・※1   https://www.jaxa.jp/press/2020/10/20201023-1_j.html
・※2   https://iss.jaxa.jp/topics/2021/01/210120_rfi.html
・※3   https://iss.jaxa.jp/topics/2021/01/210120_public.html
・※4   https://www.spacex.com/vehicles/starship/
・※5   https://www.blueorigin.com/new-shepard/
・※6   https://pdas.co.jp/
・※7   https://www.virgingalactic.com/
・※8   https://fanfun.jaxa.jp/visit/tsukuba/
・※9   https://fanfun.jaxa.jp/visit/tanegashima/
・※10 https://www.hayabusa2.jaxa.jp/