移動無線センター(MRC)は4月1日、LTE技術を用いる新たな業務用無線サービスである「MCAアドバンス」を開始した。サービス開始に伴い、日本電気(NEC)とPSCPはMRCと連携して、新たな業務用無線システム事業に参画する。
自然災害の増加や被害の甚大化、通信環境に対するニーズの多様化により、自治体やインフラ事業者を中心とする多様な業種で、輻輳・途絶しにくい通信手段の確保や各種データ利用による業務の高度化・効率化を求めているという。
こうした状況下でMRCとNECは、2017年に新たな無線サービス事業に向けた共同検討の協定を締結し、事業化に向けた準備を進めてきたとのこと。
新サービスは、MRCが防災・公共分野やBCP(事業継続計画)・業務用分野などへの無線サービスの提供、NECが中継局など無線サービスの通信環境構築、PSCPが携帯型無線機・主要なアプリケーションの提供をそれぞれ担う。
同サービスは、関東、東海、近畿、九州北部をカバーする他、札幌、仙台、新潟、広島などの都市エリアを対象に無線サービスを開始し、2022年3月までに全国に順次エリアを拡大する予定。900MHzの周波数帯を使い、従来からMRCが提供していたデジタルMCA無線の特徴を引き継ぎながら、3GPPに準拠したLTE技術の採用により、音声に加えてデータ通信も可能としている。
同サービスの特徴として3者は、耐災害性・信頼性、利便性・実用性、高セキュリティ・低コストの3点を挙げる。
耐災害性と信頼性に関しては、災害時や非常時に回線が途絶えた場合も中継局を単独運用可能といい、公衆網が混雑した際も輻輳の影響を受けないとしており、安定した無線サービスを提供するという。
停電や装置障害の対策を備えた災害に強いインフラ設備として自治体の防災システムとの代替が可能といい、また一般企業のBCP対策としての利用も可能としている。
利便性・実用性については、スマートフォン型無線機の操作で、地図上で端末の位置を確認できる指令局、チャット、映像配信などのアプリケーションを利用可能とのこと。
携帯型無線機は、PSCPが京セラおよびモトローラ・ソリューションズと提携して提供するスマートフォン型であり、防水・防塵性能を備え、24時間以上の稼働が可能といい、同サービスと公衆網であるMVNOのデュアルSIMを実装可能としている。
アプリケーションは、被災状況を伝達するための文字、画像、クリップ動画が送れるチャットアプリ(MCAアドバンスチャット)および、リアルタイムでの映像配信アプリ(MCAアドバンスライブストリーム)を初期ラインナップとして提供すると共に、ミッションクリティカルな業務を担う企業・団体のニーズに合わせたさらなるメニューの拡充を計画しているという。
セキュリティに関しては、専用周波数による閉域網であり、秘匿性・セキュリティを確保した無線サービスを提供するとしている。共同型の業務用無線のため、従来は広域自営網で対応していた電力、ガス、道路、鉄道などのインフラ事業者の設備投資の低減が可能とのこと。
3者は、自治体やインフラ事業者に加えて高いBCPレベルを求める民間企業への事業展開を進めることで今後7年間の累計で30万局の無線機展開と、それに伴うアプリケーションの提供を目指す方針だ。