IC Insightsによると、2021年の半導体メーカーの設備投資総額におけるトップ2社となるTSMCならびにSamsung Electronicsが占める割合は43%となり、トップ2社が占める割合としては過去最高を更新する見込みであるという。

先端プロセス開発で競い合うTSMCとSamsung

設備投資額が高いICメーカーは、最先端プロセスを用いたデバイスを生産することができるメーカーである、というのが半導体の歴史の中における通例とされてきた。

2021年3月時点で10nmを切るような最先端プロセスによる半導体製造が可能なICメーカー(ファウンドリ含む)は、TSMC、Samsung、Intelの3社に絞られている。この3社のうち、それぞれのコマーシャルプロセスとしての表記だが、7nmならびに5nmプロセスを用いてロジック半導体を量産できるのはTSMCとSamsungの2社のみである。

設備投資でトップ争いを繰り広げるTSMCとSamsnug

Intelは過去27年間のうちの25年、半導体メーカー別の設備投資額ランキングのトップもしくは2番手に入っていた。しかし、2020年を見ると、その投資額はSamsnugの半分程度、2021年に至ってはTSMC、Samsungともに250億ドル以上の設備投資を行うと見込まれる一方で、Intelはそこまでの額にはならないとIC Insightsでは予想している。

Samsung半導体部門の設備投資額は2010年に初めて100億ドルを突破して以降、メモリバブルで沸いた2017年に242億ドルに到達。その後も2018年に216億ドル、2019年に193億ドル、2020年に281億ドルと高止まりが続いており、この2017年から2020年の投資総額(932億ドル)は、半導体業界の歴史の中で前例がないほどの巨額で、その規模は同じ期間に中国の半導体メーカー各社が投じた設備投資額(447億ドル)の2倍以上だという。Samsungは2021年の設備投資額を明らかにしていないが、IC Insightsでは、2020年とほぼ同程度と見込んでいる。

  • 半導体設備投資

    1994年~2021年の半導体企業の設備投資額ランキングトップと2位。2021年は予測 (出所:IC Insights)

一方のTSMCも、2020年下半期の売上高に占める7nmおよび5nmプロセス品の割合が47%と、先端プロセスに対する需要が非常に高く、設備投資もそうした先端プロセス中心に進められており、同社は2021年1月、2021年の設備投資額を250~280億ドルに引き上げる計画だと発表している(IC Insightsでは275億ドルと予測している)。

IC Insightsによると、2021年のTSMCとSamsungの設備投資額の合計額は少なくとも555億ドルで、半導体業界全体の投資額に占める割合は43%と、半導体史上もっとも高い割合となる見込みだという。トップ2社の全体に占める割合は、1990年代は15%前後で推移していたものが、2000年代に20%~30%へと増加、2010年代には30%~40%へとさらに比率を高めてきた。すでにTSMCとSamsungの投資額に追いつける企業の姿は見受けられないことから、今後、この2社とそれ以外のメーカーとの投資額の差は広がっていくとIC Insightsでは見ている。

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    半導体業界全体の設備投資額に占める投資額上位2社の割合の推移 (出所:IC Insights)